数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

立方体の塗り分け問題

以前にも取り上げた「立方体の塗り分け方」を題材とした問題。
 
 
今年のある難関大学入試でも出題されました。
 
しっかりと論理的に考えられるのであれば小学生でも解けますが、中学生以上であれば、多少の時間はかかったとしても解くことができるはずです。
 
もちろん、ある一つの設問だけの話なので、難関大学の入試問題であっても、そういうこともあり得るのです。
 
「もしかして合格できる学力がある?」
などと勘違いしてしまってはいけないものの、何となく気分が良くなる面もあると思うので、トライしてみましょう。
 
 
【問題】
「3個の異なる色」を用意する。立方体の各面にいずれかの色を塗る。各面にどの色を塗るかは同様に確からしいとする。辺を共有するどの二つの面にも異なる色が塗られる確率を求めよ。
また上記と同じ条件で、「4個の異なる色」を用意した場合の確率を求めよ。
 
 
実際の問題では、「n個」で出題され極限まで求める内容となっていますが、上記の確率を求める設問も前段で出題されています。
 
※小学生のために説明しておくと、「同様に確からしい」とは「サイコロをふる時のようにどの場合となる確率も同じ」であることを意味します。

「2024都立日比谷/数学」入試問題概観

昨年あたりから従来レベルの内容に戻りつつあった都立日比谷の数学入試問題。
 
今年の内容は、新型コロナ以前の従来レベルに比して違和感を感じないものでした(1問は難問があってもいいとは思いますが…)。
 
コロナ禍から続いた“易化傾向”からの脱却は明確となり、制限時間との闘いの中で何とか解ききれるであろう設問を揃えながら、難しすぎる設問は避けた内容だったと思います。
 
 
例えば、「[3]の最後の設問」。
 
慣れていないと時間がかかってしまう可能性はあるものの、この学校の受験生であれば、このような条件設定の問題は何度も練習してきたはずですね。
 
「相似」だけで押し切れないならば「三平方」へ持っていくのは定石ですし、ましてや特別角が出てきているので大方の受験生は対応できたはずです。
 
 
そして最後の大問[4]。
 
条件設定に「回転」を含めることが、どうやら定着してきたようですね。
 
設定によってはかなり複雑にもなり得る“三次元の回転”ですが、今回の内容も平易なものにとどめていました。
 
但し、問題文をサラッと読んだだけで臨んでしまうと、
「問題文がおかしいんじゃないの?」
と感じてしまった受験生もいたかもしれませんが、そのままでも1問を除いては解ききれてしまったことでしょう。
 
つまり、
「正方形を一回転させる」
と早とちりしてしまうと、
「最終的な影の形の設問には正しく答えられない」
ものの、問題文の内容に釈然としないまま他の設問には正しく答えられたことでしょう。
 
問題作成サイドもその辺を危惧したのか、(優しいことに)助け船を出すような設問もわざわざ設けている訳で、その段階で修正できなかった受験生の方に非があると言わざるを得ませんね。

新学年を迎えて

新学年がスタートしましたね!
 
新たな環境や同級生たちに囲まれ、期待と不安が入り混じった複雑な心境かもしれませんが、学習面でも平常心さえ保つことができれば、スムーズにスタートできるはずです。
 
新学年の最初の段階は、進度も非常にゆっくりですし、教える側も脱落の危険性を排除するために、特に慎重に取り組むはずです。
 
 
当ブログでは再三伝えてきていますが、新たに中学生となる人に改めて念押ししておくと、
「特に“受験算数”をかなり無理して学んできた場合は一旦忘れて構わない」
ということです。
 
そして、中学受験を経験したことで、もし「算数・数学」に対する負のイメージを持ってしまっているのであれば、一旦リセットしてしまいましょう!
 
「数学」を一から学んでいけさえすれば、何も問題ありません。
 
“受験算数”のように、
「解くための手段の用い方自体に頭を使う」
という無駄な努力は必要はなくなり、基本的には題意をしっかり読み取り
「方程式を立てる」
ことさえできれば、後は機械的に計算するだけで解けてしまいます。
 
逆に、「受験算数が得意だったから」とその手法にこだわって取り組み続け、代数的思考法に変換できないでいると、“数学での躓き”が始まってしまうのです。
 
 
新型コロナのパンデミックの頃に記した
「各学年の4月度に押さえておくべき事項」
についての記事(下記)も参考にしながら、新学年をスムーズにスタートさせてくださいね。
 

古典問題に学ぼう!

どこかで聞いたことがあるような、ちょっと「ん?」と感じてしまう古典問題。
 
以前にも「油分け問題」などを扱ったことがありますが、長く取り上げられ続けているということは、その裏に「なるほど!」と思わず声が漏れてしまうような論理が潜んでいるからこそですね。
 
初見の人のために、その“論理のからくり”を改めて考えてみることにしましょう。
 
 
【問題】
ある村の三兄弟が親から17頭のらくだを相続することになった。
しかし遺言には、
「長男には1/2、次男には1/3、三男には1/9を分け与える」
とあり、三兄弟はどうしたらよいか悩んでいた。
そこへ村の長老が現れ、
「わしのらくだを1頭貸し与えてやれば解決するじゃろ」
と、
「合計18頭になったらくだの1/2にあたる9頭を長男に、次男には1/3の6頭、三男には1/9の2頭」
をそれぞれに分け与え、残った1頭を、
「これは貸した分だから」
と連れ帰っていった。
さぁ、この長老の裁きは正しいだろうか?
 
 
正しいか正しくないか、いずれにしてもその理由こそが大切ですね。
 
そして“論理”を解明できたら、同様な例題を思いつけるか(さらには一般化できるか)、考えを深めてみましょう。
 
 
 
【解説】
当然ながら、
「生き物なので分割することができない」
ので悩んでしまう訳ですね。
 
まず、
「遺言自体がおかしい」
ということには気づくと思います。
 
「1/2+1/3+1/9=17/18」
だからですね。
 
しかし、長老が1頭貸すことできれいに3人に分割でき、なおかつ長老の1頭も無事本人に戻ってくるので、「お見事!」と言いたくなりますよね。
 
結論から言うと、
「分割できない生き物の相続なのでこれで皆納得できる“名裁き”」
となるでしょう。
 
それぞれの「相続割合」は遺言とは異なってくるものの、それぞれの割合に応じて案分されて付加されることになり、誰も異存のない分け方だからです。
 
これは、数学的に解決するという側面よりも、
「皆が気持ちよく納得できる解決法」
であり、理詰めをもとにしながらも、このような機転を利かせることこそが、人間社会で生きていく上では大切な頭の使い方ですね。
 
 
しかし、実に様々な情報に簡単にアクセスできてしまう現在、
“一見論理的なからくり”
を用いて詐欺をはたらく悪しき者共もはびこっていますので、とにかく
“一見おいしそうな話”
には十分に注意しましょうね。
 
 
 
【他の例題
例えば、
「19頭→1/2,1/4,1/5の場合」
など色々と考えられますね。
 
さらに突き詰めたいならば、
「一般化するとどうなるか」
まで考えてみてもいいでしょう。

「2種類の比」の扱い方に慣れよう!

 
小学生は、基本的には方程式を用いて問題を解くことはないので、特に“受験算数”においては、「比」を駆使しながら問題に取り組むことになります。
 
そこで、ややテクニカルな手法を用いたりする場合もあるので、それに馴染めないと、“受験算数”が嫌いになってしまう原因にもなってしまいます。
 
確かに、“逆比”まで駆使してガチャガチャ解くような問題の場合は、
「方程式で解けば簡単なのに…」
と同情してしまう例が結構あるのも事実です。
 
 
今回の問題はいわゆる「整数問題」ですが、その条件設定に比が用いられているだけなので、何とか理詰めで解ききってほしいところです。
 
高校入試問題ではあるのですが、不定方程式を立てるまでもない内容なので、小学生のように解いても時間的な差はないでしょう。
 
 
【問題
あるバスの乗客の大人とこどもの人数比は7:4であった。
次の停留所で降車する人はおらず、新しく大人とこども合わせて8人が乗車してきたところ、大人とこどもの人数比が8:5となった。
バスの最大乗車人数が55人のとき、停留所を出発した後の大人とこどもの人数はそれぞれ何人か?
 
 
【解説】
まず、
最大乗車人数が55人」
なので、かなりパターンが絞られますね。
 
人数比が8:5」
という条件から、
「出発後の総人数は13or26or39or52人」
しかあり得ないですね。
 
そこから、
「8人増える前の総人数が“7+4=11の倍数”」
となる場合を探せばいいだけですね。
 
そうすると1通りしか該当しないので、
∴出発後の大人は32人、こどもは20人
 
 
(2023ラ・サール・改題)

一度は解いておくべき計算問題

今回も、どこかで見かけたことがある人も多いと思われるものの、初見の人にとっては結構難儀してしまうような「計算問題」を取り上げてみましょう。
 
 
例えば、
 
1/2+1/6+1/12+1/20+1/30
 
という計算問題を出されたら、普通に通分して計算していく人も多いかもしれません。
 
このぐらいの計算だと、その方法でも全く構わないのですが、次のような計算になると「面倒だなぁ」と感じてしまうのではないでしょうか。
 
3/4+3/28+3/70+3/130+3/208
 
このような計算は、一度取り組んでおくと頭に残るはずなので、“頭の中の引き出し”を一つ増やすつもりで取り組んでみましょう。
 
 
なお、入試で
“厄介そうな計算問題”
が出題されたら、まずは
“何らかの計算の工夫”
を考えるのは鉄則でもありますが、難関校になると、時にはゴリゴリの厄介な計算をさせる場合もありますから注意しましょう。
 
 
※今回の計算は“瞬殺”できるところがポイントです。
その工夫の原理をしっかり理解しておくことが、“頭の中に残す”ことにつながります。
 
 
最初の式は、
「1/1×2+1/2×3+1/3×4+1/4×5+1/5×6」
と捉えることができれば、
「(1/1-1/2)+(1/2-1/3)+(1/3-1/4)+(1/4-1/5)+(1/5-1/6)」
と変形できます。
 
つまり、どんどん相殺されていくので
「1/1-1/6」
を計算すればいいだけとなり、すぐ
∴5/6
と答えが出てきますね。
 
 
初見の人にとっては、言われてみれば納得できるものの、なかなか気づきにくい変形でもありますね。
 
ただ、一度知っておけばもう大丈夫です。
 
そのためにも、次の計算に取り組むことで、
“どのような場合にこのような計算が可能となるか”
をしっかり理解しておきましょう。
 
 
 
【解説】
「3/1×4+3/4×7+3/7×10+3/10×13+3/13×16」
と捉えることで、
「(1/1-1/4)+(1/4-1/7)+(1/7-1/10)+(1/10-1/13)+(1/13-1/16)」
と変形できますね。
∴15/16
 
 
 
「まず3でくくる」
というようなことをしてしまうようだと、この計算の原理をわかっていない証拠ですから、しっかり原理を理解しておきましょうね。

図形どうしの面積の差

この時期は、なぞなぞのようなちょっとオモシロイ問題でリフレッシュしてみましょうか。
 
 
ある図形の面積を求めること自体は難しいものの、
「ある図形とある図形の面積の差」
であれば求めることが可能な場合があります。
例えば、
 
【問題】
正三角形ABCの辺AC,AB上にそれぞれ点D,Eを、
「∠DBC=∠ECB=45゜」
となるようにとり、
「BD=10」
とする。
線分DBと線分ECの交点をFとするとき、
「△FBC-四角形AEFD」
を求めよ。
 
 
「“定規直角三角形”の3辺比」
は中3生以上であれば知っているはずですが、中2生以下でも、部分的な辺の比であればわかりますね。
 
さらに、
「直角二等辺三角形の斜辺と他の1辺の比」
中2生以下では求められないものの、例えば、
「斜辺10の直角二等辺三角形の面積」
であれば求めることができるはずです。
 
上記のことがわかっていれば、誰でも解くことができるので、この類の問題が初見であれば、一度解いておくといいでしょう。
 
 
【解説】
例えば、辺AC上に、
「∠GBA=45゜となる点G」
をとると、
「△BDG=10×5×1/2=25」
が求めるべき
「△FBC-四角形AEFD」
の値となりますね。
 
まだ、
「ん?」
となっているのであれば、例えば
FBCと四角形AEFDにそれぞれ△CDFを加える」
ということを試してみましょう。
 
 
(2024麻布中・改題)
 
 
 
★今回のポイントとしては、
「相殺される部分を“見える化”する」
ことですが、さらには
「相殺される部分をつくり出す」
という操作も今後大切になってくるので覚えておきましょう。