数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

有名な展開図

学年に関係なく、小学生から大人まで誰にでも考えられる、有名な展開図に関する問題をやってみましょう。


【問題】
下図は、正三角形のみで構成されたある立体の展開図である。
この展開図から立体を組み立てたとき、下記の問いに答えよ。

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(1)どのような立体ができるか?
(2)展開図上の辺BCはどの辺と一致して立体を構成することになるか?
(3)面TUVと平行になる面はあるか?ある場合はどの面か?


【解説】
(1)
「正二十面体」ですね。

但し、
「なぜ正多面体だと言えるのか?」
と問われたとき、
「全ての面が合同な正多角形だから」
では不十分ですね。

「全ての面が合同な正多角形で、1つの頂点に集まる面の数が全て同じだから」
と答えなくてはいけませんね。
(※厳密には「へこみのない」という条件も必要です。)

例えば、
「正三角形6個のみで構成された平行四辺形BCIR」
という展開図で考えてみましょう。

合同な正多角形のみですが、組み立てても
「正六面体」
とはなりませんね。
(気になる人は実際につくってみましょう!)


(2)
正しくは、
「辺NM」
と答えるべきですね。

アルファベット順に
「辺MN」
と答えたら、場合によっては“不正解”とされる可能性もありますね。


(3)
これが、前回の内容に絡んでくる設問ですが、
「面IJK」
と平行になりますね。

初めてこの展開図を見てこの設問に答えるのであれば、かなりの“立体認知能力”が必要でしょう。

正二十面体の模型とにらめっこしながら、面がどのように構成されているかを十分に理解しておきましょう。
そうすれば、他の展開図で出題されても、展開図上のみで対応することも可能でしょう。

正二十面体くらい複雑になってくると、
「いかに慣れ親しんできたか」
で対応力に大きな差が出てくるでしょう。


難関校入試になると、
「正多面体ではない複雑な多面体」
についての出題は当たり前です。

その対応力を鍛えるためにも、わずか5種類しかない正多面体については慣れ親しんでおきましょう。

今こそ正多面体をつくっておこう!

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正多面体の模型が、日々目にするような場所にあり、すぐ手にとって確かめられるようにしておくことを、以前から勧めてきました。

それを実行してきた人は、
「“平行な面”が存在する正多面体」
が何であるかは、自然と脳裏に刻み込まれていることでしょう。

入試などで題材となりやすいのが、その
“平行面間の距離”
に関する問題です。


例えば、ちょっと前ですが「筑駒の入試問題」では、
“正二十面体の平行面間の距離”
に関して出題されています。

高校入試で、この「距離自体」を求めさせるのは課程を逸脱しているので、「距離の2乗」を求めさせる問題となっています。

その際も、前回の「正二十面体の性質」を把握していれば、簡単に解けてしまう訳です。
(※この解説は、現段階では未習分野となるので、また別の機会にしましょう。)


ここで、改めて伝えておきます。
在宅時間が多くならざるを得ないこの状況を利用して、正多面体を全種類つくりましょう!

後悔するかしないかは、あなた次第です。

長方形を相互に貫入させると・・

合同な長方形3つを、そのど真ん中で相互に垂直に貫入(長辺方向に平行)させると、下図のようになります。

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実際に作ってみてもいいでしょう。

ある程度の厚紙で、
「5cm×8cmの長方形」
を3つ作ります。
(この長短辺比率ならばどのような大きさでも構いません。)

それらの真ん中に相互に貫入させていくのですが、しっかり手順を考えて作らないとうまくいきません。
一つずつ接着して固定してから作っていった方がいいでしょう。


さぁ、これはある立体の性質を理解するための模型なのですが、それは一体何でしょうか?



長方形の全ての頂点を結んでみましょう。

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そうです、
「正二十面体」
ですね。


実際の長短辺比率は正確には異なるのですが、作ってみる分には誤差の範囲として問題ないでしょう。

今後学習を進めていけば、この長短辺比率を実際に計算で求めらるようになります。

その理解のためには、やはり、
「正多面体に慣れ親しんできたか」
が大きく影響してくるでしょう。

「6個のサイコロ」未解決問題…

「確率・場合の数」関連の問題で、
“余事象で考える”
と、時に鮮やかに解ける場合がありますね。

それは、
「余事象の場合の数が圧倒的に少ない」
場合が多いですね。

しかし、必ずしもそのような場合だけではないことを、次の2問を通してみていきましょう。



【問題-1】
3桁の自然数で、数字の「9」を含む数はいくつあるか?


【解説】
当然、余事象の、
「9を含まない3桁の自然数
に着目すればいいんでしたね。

「0,1,2,3,4,5,6,7,8」
の9個の数字を組み合わせた3桁の自然数は、
「8×9×9個」
あるので、
∴9×10×10-8×9×9=252個

※別解は「堅実派がはまりやすい落とし穴」
https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2019/10/03/%E5%A0%85%E5%AE%9F%E6%B4%BE%E3%81%8C%E3%81%AF%E3%81%BE%E3%82%8A%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84%E8%90%BD%E3%81%A8%E3%81%97%E7%A9%B4


この【問題-1】の場合は、
「余事象の場合の数が全体の7割以上」
もありますが、余事象で考えた方が圧倒的に楽ですね。



では、次のような問題の場合はどうでしょうか。


【問題-2】
6個のサイコロを振って「いくつかの目の和が10になる」ような出方となる確率は?
(答え;約98%)


答えから推察すれば、
「余事象で考えれば簡単に求まるな…」
とまず思いますよね。

で、まず思いつくのは、
「6個の目の和が9以下」
となる場合ですが、
「6個の目の和が11以上」
となる場合でも結構あり得ますね…
(2,3,3,3,3,6)とか…

と考えていくと、方針が見えてきそうで見えきらないもどかしさが…

果たしてスッキリと確率を求める方法はあるのでしょうか…


この【問題-2】の場合は、
「余事象が全体のたった2%」
でしかないのに、簡単に数え上げることはできないでしょう。
(※STAY HOME週間だったからこそ試してみましたが、かなり地道な場合分けが必要です…。もし、簡単な方法がある場合は、お知らせいただければ幸いです。)


とにかく、今回伝えたかったことは次の通りです。

全体に占める割合にかかわらず必ず余事象をチェックした上で、 
“余事象で考える方が楽か否か”
で、解き進める方針を決めましょう!

“オッチョコチョイ”は誰だ!?

中3生は、来たるべき高校入試に向けて、
「短時間に正確に解ききる力」
を養っておかなければなりません。

平方根」が未習であっても解ける問題で、現在の力を確認しましょう。
(※中2生でも十分に挑戦できます。)

制限時間は「5分」です。


【問題】
(m-3)(n-2)が素数となるような1桁の自然数(m,n)の組は何通りあるか?


【解説】
https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2019/09/05/2%E6%95%B0%E3%81%AE%E7%A9%8D%E3%81%8C%E7%B4%A0%E6%95%B0/%E8%A7%A3%E7%AD%94


中3生は、習いたてだからといって、展開してしまってはいけませんね。

正答を導き出せなかった人は、「注意力」を一層磨きましょう。

新中3生の「4月度の確認事項」と「5月度の目標」

まだまだ、休校期間延長もやむを得ない状況ですね…。

中3課程では、高校入試に直結する様々なことを学んでいかなければなりません。


4月中は、
「展開・因数分解
の練習をしっかりやり込んでおくように伝えました。

「“中3生”が4月中にマスターしておくべきこと」
https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2020/04/09/134356

これらは、単なる式変形なので、独学で練習を積んでいくことは十分可能です。


そして、5月中は、
平方根
について学びます。

これは、新しい概念となるので、映像授業等ではなく“対面”でしっかり教えたい分野です。
この概念をしっかり理解できていないと、整数関連の応用問題や「2次方程式」の分野で影響が出る恐れがあります。

もしわからなくなったら、学校の先生等に質問して、しっかり解決してから先に進むようにしましょう。

当ブログでも、いくつも平方根関連の問題を取り上げていますので、6月になったらトライしてみてください。



なお、「展開・因数分解」をしっかりやり込んだ人は、次のような問題にも取り組んでみるといいでしょう。

【問題】
(1)2027×2027+2019×2020-4039×2027=?
https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2019/09/25/%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%AA%E6%95%B0%E3%81%AE%E8%A8%88%E7%AE%97/%E8%A7%A3%E8%AA%AC

(2)9991を素因数分解せよ。
https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2019/06/10/%E7%B4%A0%E5%9B%A0%E6%95%B0%E5%88%86%E8%A7%A3%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E5%B7%A5%E5%A4%AB/%E8%A7%A3%E7%AD%94_

他に、
「サクッとできればOK!(因数分解編)」
https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2020/01/18/003608

因数分解(応用編)」
https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2019/09/26/%E5%9B%A0%E6%95%B0%E5%88%86%E8%A7%A3%EF%BC%88%E5%BF%9C%E7%94%A8%E7%B7%A8%EF%BC%89

不定方程式と不等式

1次の不定方程式ならば、式変形せずとも、力業で押し切って自然数解を求められるものもあります。

例えば、
不定方程式(3元1次)」
https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2019/09/12/
のような問題です。

では、次のような条件が付加されたら、どのように解きますか。


【問題】
x+3y+6z=30
x≧y≧z
を満たす自然数x,y,zの組は何通りあるか?


不定方程式を満たす自然数解を全て求めてから、不等式を満たすものを吟味するのでは、この問題をやる意味がありませんので、工夫してみましょう。


【解説】
自然数x,y,zの大小関係が決まっているので、まず値の範囲を絞り込んでおきましょう。

最小のもの(z)に着目すると、
z+3z+6z≦x+3y+6z=30
10z≦30
z≦3

(最大のものに着目して、
30=x+3y+6z≦x+3x+6x
30≦10x
3≦x
でも構いません。)


(ⅰ)z=3のとき

x+3y=12
となり、
4y≦x+3y≦4x
も成り立ちます。

よって、
y≦3,x≧3
より、
x=y=3
の場合のみ適となります。


(ⅱ)z=2のとき

同様にして、
x+3y=18
y≦9/2,x≧9/2
となり、
y=2,3,4
の場合のみ適となります。
(※y=1の場合は不適であることに注意)


(ⅲ)z=1のとき

同様にして、
x+3y=24
y≦6,x≧6
となり、
y=1,2,3,4,5,6
の場合のみ適となります。


∴10通り


このような平易な問題の場合は、不等式を用いる意義をあまり感じられないかもしれません。

しかし、例えば、
「1/x+1/y+1/z=1/2,x≦y≦z
を満たす自然数x,y,zを求めよ。」
というような問題の場合は重宝します。