数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

「円関連」の総合問題(2020都立日比谷・改題)

相似、三平方、円関連の知識を駆使して解く総合問題です。

実際の入試では、誘導設問が前段にあるのですが、「円問題」に取り組む練習として誘導なしでやってみましょう。


【問題】

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図のように、線分CEを直径とする円Oの円周上にA~Gの7つの点があり、
「AB〃GC,BD〃CE,CE⊥DF」
である。
線分CEと線分DFの交点をH、線分ABと線分FGの交点をIとする。
OC=5,CD=9,AB=9のとき、線分FIの長さを求めよ。


(答え;10√19/9)


【解説】
「円問題」に取り組む際は、まず、
「相似な三角形」
を正しく把握することが大切です。

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今回の場合は、
「△AFI∽△DCE(∽△HCD)」
の把握が鍵になってきます。

そこから、
「∠FAI=∠CDE=90゜」
であることを用いれば、簡単に解けてしまいます。

つまり、
「線分BFは直径」
であることがわかるので、三平方より
「AF=√19」

よって、
「△AFI∽△DCE」
であることから3辺比を用いて、
∴FI=10√19/9



なお、実際の入試問題では、
「△AFI∽△HCD」
を前段の設問で証明させています。

まず、
「円に内接する四角形AFDB」
において、
「∠FDB=90゜」
であることから、
「∠FAI=90゜」
が簡単に導けます。

また、
「∠AFIは弧AG=弧BC=弧DEの円周角」
であることから、
「∠AFI=∠DCE」
となり、2角相等により、
「△AFI∽△DCE∽△HCD」
となりますね。


この証明問題が誘導することで本問題が解きやすくなっている訳ですが、
「円の内外における相似な三角形」
を“正しく”把握する練習は大切です。

“方べきの定理”の原理も正しく理解せずに、便利さで使ってしまっているような場合は、特に注意が必要です。

小学生も“未解決問題”にチャレンジしよう!(2020都立西・改題)

実際に都立西で出題された“未解決問題”に、小学生もチャレンジしてみましょう。

“未解決”と言っても、あることが
「全ての整数において成り立つかは未解決」
という意味なので、小学生でも身構えることなく十分取り組める内容です。


【問題】
「ある自然数aが
(1)偶数ならばaを2で割る
(2)奇数ならばaを3倍して1を加える」
という操作を自然数に繰り返して行い、初めて1になるまでの操作の回数をN(a)とする(但しN(1)=0)。
例えば、10に繰り返し操作を行う(a=10の場合)と、
10→5→16→8→4→2→1
となり、6回の操作で初めて1となるので、N(10)=6となる。
(問1)N(6)を求めよ。
(問2)N(a)=7となる自然数aを全て求めよ。
(問3)N(168)-N(8×k)=3を満たす自然数kを求めよ。


(答え;8,?,16)



【解説】
(問1)
6→3→10→5→16→8→4→2→1
∴N(6)=8


(問2)
逆算で考えていけばいいですね。

1←2←4←8←16←5←10←3
1←2←4←8←16←5←10←20
1←2←4←8←16←32←64←21
1←2←4←8←16←32←64←128

∴a=3,20,21,128


(問3)
まず、
168→84→42→21→64→32→16→8→4→2→1
より、
「N(168)=10」
となるので、
「N(8×k)=7」
とわかります。

ここで、
「8×k→4×k→2×k→k」
と、
「kになるまで3回の操作」
が必要なので、
「あと4回の操作で1」
となれば題意を満たしますね。

すると、これまでの経緯から、
「16→8→4→2→1」
という、
「最後の4回の操作の流れ」
は決まっていることがわかるので、
∴k=16


もしくは、(問2)の結果より、
「8の倍数」
を探せばk=16とわかりますね。



※なお、
(問1,3)が2020都立西の(問1,2)、
(問2)が2020愛知県立の問題でした。


慶應義塾中等部(2021)では、「12回の操作が必要な自然数」を見つけさせる出題がありましたね。

2020都立西/数学 概観

来年の都立入試では、
「三平方を駆使して解く問題」
の代わりに、例えば【4】のような
「整数や規則性を題材とした問題」
が増える可能性は高いでしょう。



【1】(小問集合)

確実に全問正解にすべき内容です。
「作図」については、既に下記にて解説済みです。
https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2020/03/15/090555


【2】(関数のグラフと幾何)

全問正解にできる内容です。
与条件通りに順番に方程式を立てれば解けるはずです。


【3】(円・立体)

(問1),(問2)は確実に解ききっておきましょう。
(問3)も難しくはありませんが、行き詰まってしまったら後回しでもいいでしょう。


【4】(整数)

「未解決問題」を題材とした、毎度の“都立西らしいラスト問題”ですが、(問1)は必ず解ききっておきましょう。
落ち着いて考える余裕があれば、少なくとも(問2)までは解けるはずです。

※「未解決問題」を知っていたか否かは、殆ど得点に影響しないので、心配してあれこれ調べなくても大丈夫です。
【解説】→
https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2020/10/08/171043



2019年の概観→
https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2019/06/18/2019%E9%83%BD%E7%AB%8B%E8%A5%BF/%E6%95%B0%E5%AD%A6_%E6%A6%82%E8%A6%B3

2020都立日比谷/数学 概観

塾などでの履修状況によっては、そろそろ過去問に手を出せる受験生もいることでしょう。

そこで、今年も、
「どの問題を確実に得点につなげていくべきか」
などの“概観”を、都立トップ校について綴っておきます。

但し、来年の都立入試の出題範囲からは「三平方は除外」されるので、内容はガラッと変わる可能性が高いでしょう。



【1】(小問集合)
確実に全問正解にすべき内容です。
「作図」については、既に下記にて解説済みです。

https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2020/03/12/212357


【2】(関数のグラフと幾何)
(問1)は確実に解ききっておきましょう。
(問2-記述問)は、解く道筋の見当だけつけたら、他の問題にあたりをつけてから、後に回して落ち着いて解いていった方がいいかもしれません。


【3】(円)
(問1),(問2-1-証明)は確実に解ききっておきましょう。
(問2-2)は、「直角の活用」に気づけばアッという間に解けてしまいますが、気づくまでに時間がかかる可能性もあるので、後回しでいいでしょう。

https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2020/10/11/142044


【4】(立体)
(問1),(問2-記述問)は確実に解ききっておきましょう。
(問3)は、やや時間がかかる可能性もあるので、後回しでいいでしょう。
この設問についても、既に下記にて解説済みです。

https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2020/02/22/155811


そして残りの時間を使って、後回しにした3問を、自分が一番取り組みやすいものから解いていけばいいでしょう。

なお、「記述問」は優先して解いておいた方が、得点につながる可能性が高くなりますね。



2019年の概観→
https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2019/06/16/2019%E9%83%BD%E7%AB%8B%E6%97%A5%E6%AF%94%E8%B0%B7/%E6%95%B0%E5%AD%A6_%E6%A6%82%E8%A6%B3


※他校の“入試問題概観”の要望がある場合は、できるだけ対応します。

「線分比~面積比」の変換を活用しよう!(2020大分県立・改題)

前回に引き続き、半円を題材とした、
「線分比~面積比の変換」
の練習問題です。

必ずと言ってもいいくらい、どこかで見かけたことがある図だと思います。

一般の県立入試問題ですが、「比の変換」ができないと、解けない可能性もあるでしょう。

しかし、もうヒントを与えたも同然なので、解ききれなければいけませんね。


【問題】

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線分ABを直径とする半円弧上に点C,Dをとり、直線ADと直線BCの交点をEとする。
また、線分BDと線分ACの交点をFとし、線分EFと線分CDの交点をGとする。
AD=5,DE=3,BC=2のとき、線分EGの長さを求めよ。


(答え;12√39/23)


【解説】
「線分の長さ」
を求めるには、
「相似か三平方」
を用いるのが基本スタンスですね。

しかし、どちらを用いても、一発で線分EGは求まりそうにありませんね。

そこで、視点を変えて
「線分EF」
ならば、直角三角形の斜辺なので求まりそうです。

そこから、
「EG:GF」
の比がわかれば、線分EGは求まりますね。

このように、
「“逆算”から解く方針を立てる」
ようにすれば、無駄な検討をせずに済みますね。


まず、
「△ACE∽△BDE」
より、
「EC=4」
を導きましょう。

すると、三平方より、
「AC=4√3」

また、
「△ACE∽△ADF」
より、
「AF=10√3/3」
と求まるので、
「FC=2√3/3」

つまり、
「AF:FC=5:1=△ADF:△CDF」

また、題意より、
「△CDA:△CDE=5:3」

よって、
「△CDE:△CDF=18:5=EG:GF」

ここで、△CEFで三平方より、
「EF=2√39/3」
であることから、
∴EG=12√39/23

サクッとできればOK!/面積比編(2020熊本県立・改題)

初めて熊本県出身の力士(正代)が優勝したことを祝して、熊本県立からの「半円」を題材とした面積比の問題です。

実際の問題では、
「△AFD∽△CDE」
を証明させてからの設問となりますが、いきなりサクッと解けるか否かをチェックしてみましょう。


【問題】

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長さ7の線分ABを直径とする半円があり、線分ABの中点をOとする。
その半円弧AB上に点C,Dを、
「BC=3,弧CD=弧AD」
となるようにとる。
線分ACと線分OD,BDとの交点を、それぞれE,Fとする。
このとき、△AFDの面積は△CDEの面積の何倍か。


(答え;7/5倍)



【解説】
むしろ、前段の
「△AFD∽△CDE」
に引っ張られない方が簡単に解けてしまうパターンの問題です。

例によって、
「面積比~線分比」
の変換ができれば簡単に解けますね。

「△AFD:△CDE=AF:CE」
を用いて解いていきましょう。

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まず、題意より、
「△AED≡△CED」
もしくは、
「△AEO≡△CEO」
より、
「AE=CE」(*1)
を確認しておきましょう。

また、題意より、
「線分BFは∠ABCの二等分線」
なので、
「AF:FC=AB:CB=7:3」(*2)

(*1),(*2)より、
「AF:CE=7:5=△AFD:△CDE」

∴△AFDは△CDEの7/5倍

“受験算数”だけが苦手なお子さんへの注意点

中学受験予定の小6生のお子さんは、本格的な受験態勢に入ってきていると思います。

中には、“受験算数”で苦労しているお子さんもいることでしょう。


以前にもお伝えしましたが、
「“受験算数”には向き不向き」
があるのは否めません。

大雑把に言えば、
「ものごとの捉え方の成長度合い」
によるものなので、小学校高学年の時点で「受験算数」が苦手だからといって、将来「数学」が苦手になるとは限りません。

しかし、どうしても中学受験をしなければいけない状況であるならば、入試までに何としても「受験算数対応力」を身につけなければ、合格への道は開けないでしょう。


そこで、
「他の科目は得意なのに受験算数だけが苦手…」
という優等生(特に女子)の場合、
“周囲の期待と自らのプライド”
のために、何とか取り繕ってしのごうとしている可能性もあるので注意してあげましょう。

例えば、
「パターン別の解き方」
をひたすら覚えることでしのごうとするのが、よくあるケースです。

典型的な問題は見事に解いてしまうのですが、理解を伴って解いていないので、ちょっと応用して解く必要がある問題になると、全く手が出せなくなる訳です。

そして間違えた問題は、優等生なので、ちゃんと“解き直し”はするのです。

しかし、これが曲者で、下記のような“解き直し”を何回繰り返したところで、結果は変わらないでしょう…。


そこで、まずは
「解き直し内容のチェック」
をしっかりしてあげることが大切です。

進学塾などで大量の問題が出されている場合は、中々目が届きにくいのですが、これをしないことには事態は打開できません。


まず、
「模範解答を丸写し」
していないかチェックしましょう。

解説を一旦読んで理解したら、それを見ずに自分の力で解いてこそ「解き直し」です。


そこで、塾や親御さんは、
「解説抜きの正答のみ」
の冊子を渡して、自分で解き直しをさせようとするでしょう。

そして解き直しノートなどに、
「“それっぽい途中式”と正答」
が記されていると、
「ちゃんと解き直しをしているな」
と安心してしまうと思います。

しかし、取り繕うことを選択してしまった“優等生”は、
「正答にたどり着くような意味のない途中式」
を“捏造”してしまうことがあるのです。

但し、これを見抜くには、受験算数の知識を正しく持っている必要があります。

中には、独特な方法で解かせる指導を行っている塾もあるので、一見“捏造”式かと思いきや、正しく解いている場合もあるからです。

“昔とった杵柄”で親御さんがチェックする場合は、十分注意した上で行いましょう。


上記のような事態が明らかになった場合、学年により対応が異なってきます。

6年生の場合は、
「塾などの指導法を踏襲」
して入試に臨ませるしかないでしょう。
そして本番まで、“抜け落ちた理解”を一つでも多く積み直し続けましょう。

5年生以下の場合は、まだ時間があるので思い切って
「指導法や通塾コースを変更」
することを考えた方が、今後有意義な時間を過ごせると思います。