数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

ちょっとオモシロイ整数問題(2020筑駒中)

今年の中学入試問題からの出題です。

読者からの指摘で、中々オモシロそうな問題だと気づいたので紹介します。

「整数問題」なので“力業”でも解けないことはありませんが、入試という制限時間を考慮すると、得策とは言えませんね。

どうすれば短時間に解ききることができるか、考えてみてください。


【問題】
下記の場合において、いずれも「少なくとも1個は買う」ものとするとき、何通り考えられるか?

(1)
1個50円のA、1個100円のB、1個150円のCを各々いくつか買って700円となる場合

(2)
1個47円のX、1個97円のY、1個147円のZを各々いくつか買って1499円となる場合


(答え;10通り,6通り)


【解説】
「整数問題」を解くコツは、
“いかに絞り込んでいくか”
に尽きます。

中学生以上ならば、“合同式”を用いて解いてしまうのが一番早いでしょう。
または、“不定方程式の定番解法”で押し切っても構わないでしょう。

しかし、小学生にも何とか解いてもらえるように、上記に準じた“力業”オンリーではない方法で解いてみますね。


(1)
小学生ならば、
「最大金額を占めるものを順次固定」
して考えていけばいいでしょう。

ここで、
「50,100,150,700」
という整数をみて、
「50を“ひとかたまり”」
と考えて計算することができれば、方程式を解く場合と遜色なくなります。

当然、中学生以上ならば、
「A,B,Cの個数をそれぞれa,b,c個」
とおいて方程式を立て、
「a+2b+3c=14」
と整理してから、後は小学生と同様に解けばいいですね。

(a,b,c)=(9,1,1),(7,2,1),(5,3,1),(3,4,1),(1,5,1),(6,1,2),(4,2,2),(2,3,2),(3,1,3),(1,2,3)

∴10通り


(2)
着目すべきポイントは、
「全てが(1)より3円安い」
というところですね。

つまり、合計の1499円は、
「50円単位の金額」
から、
“3円×総個数分だけ減額した結果”
と考えることができますね。

そこで小学生ならば、
鶴亀算的捉え方”
を思いつくでしょう。

まず、
「1499÷47≒31.8」
であることから、
「総個数は最大でも“32個”」
とわかりますね。
(※実際は97円,147円を少なくとも1個ずつ含むので“30個未満”となるはずです。)

または、(1)の結果から類推して、
「総個数は最大でも20数個」
と考えてもいいでしょう。

ということは、減額分の、
「“3円×総個数“は100円未満」
であることがわかるので、
「“50円単位の金額”は1550円」
しかあり得ませんね。
(∵1600円ならば101円の減額が必要)

つまり、
「1550-1499=51円」
の減額の結果が1499円となるので、
「51÷3=17」
より、
「総個数は17個」
と判明しますね。
(※総個数は“合同式”を用いるとアッという間に求まります。)


ここから先は、小学生は“力業”に頼るしかないのが普通でしょう。
しかし、筑駒中を狙う小学生ならば、以下のような方程式的な発想も十分可能でしょう。


以上より、
「X,Y,Zの個数をそれぞれx,y,z個」
として方程式を立てていきます。

まず、
「50x+100y+150z=1550」
整理して、
「x+2y+3z=31」(*1)

また、総個数より、
「x+y+z=17」(*2)

(*1),(*2)より、
「y+2z=14」

(x,y,z)=(4,12,1),(5,10,2),(6,8,3),(7,6,4),(8,4,5),(9,2,6)

∴6通り


文章で説明すると、随分と長く感じるかもしれませんが、“鶴亀算的捉え方”のあたりはサッと発想できるはずです。

しかし、いずれにしても、小学生が(2)を短時間に解ききるには“数論センス”が必要かもしれませんね。