数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

素数と“接する作法”を学ぼう!(2020早実)

問題の難易度を上げたけれは、“思考する内容”をレベルアップさせるのは当たり前ですね。

内容的には平易なのに、問題文を理解し辛くさせることで、さも“難しい問題”かのように見せかけるのは邪道極まりありませんね。


以前、ある都立の入試問題で、内容的には中級レベルに過ぎない問題を、条件設定をくどくどとやたら長文で説明することによって、解く時間を長引かせるような出題が続いたことがありました。

数年で改善されたものの、問題作成者の質、ひいては学校全体の数学教育の質にまでも、疑念を抱かざるを得ませんでした…。


数学の問題においては、
「いかに簡潔で、いかに奥深い内容にするか」
で、解けても解けなくても“清々しさ”を味わうことができるでしょう。


素数”は、数学者が取り組んでも果てしない奥深さがあります。

しかし、入試で扱われるレベルであれば、基本的な“接する作法”のようなものを身につけていれば、それほど怖れる必要はありません。

次の問題は「小問集合」の中の1問なので、それほど奥深いという訳ではありませんが、いくつかの原理を用いて取り組む必要がある良問です。



【問題】
p,qを異なる2つの素数とする。
2次方程式x×x-px+q×q=0が異なる2つの整数解を持つとき、p,qの値をそれぞれ求めよ。



【解説】
2次方程式の解と係数の関係」
をいきなり持ち出すのはまだ早いので、順番に説明していきましょう。


まずは、この方程式の
「異なる2つの整数解をm,n」
とおきます。

すると、この方程式は、
(x-m)(x-n)=0
と変形されるはずですね。
つまり、
x×x-(m+n)x+mn=0
となりますね。

ここで、2つの方程式の係数・定数項を比較すると、
「p=m+n,q×q=m×n」
とならなければいけないことがわかります。

そこで、まず、
「q×q=m×nでqは素数
ということは、
「mとn」は「1とq×q」か「-1と-q×q」
しかあり得ないということです。

すると、
「m+n」は「1+q×q」か「-1-q×q」
となりますが、
「m+n=p>0」
ですから、
「m+n=p=1+q×q」
の場合のみ適ですね。

これで、第一段階の検討が終了です。


次に、
「q×qはq=2の場合以外は奇数」
となるので、
「p=q×q+1は偶数(q≠2)」
となります。

すると、
「pは素数かつ偶数」
となるので、
「p=2」
しかあり得なくなり、これを満たすqは存在しません。

これより、
「q=2の場合」
のみ題意を満たすので、
∴p=5,q=2


このように、あれだけ簡潔な問題文なのに、これだけの検討を経た上で答えにたどりつく訳です。