数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

「n回試行」の確率問題(2022大阪大学・改題)

ある国立大学の今年の入試問題なのですが、「場合の数・確率」や「整数」分野において、中学生にも理解しておいてほしい大切な考え方の訓練になるので、是非取り組んでみましょう。

「サイコロをn回投げる」という設定が、中学生には敷居が高いように感じさせてしまうかもしれませんが、落ち着いて考えれば十分に太刀打ちできるはずです。



【問題】
1個のサイコロ(1~6の目)をn回投げて出るn個の目の数の、
(1)最小公倍数が素数でない確率は?
(2)最大公約数が素数でない確率は?



まずは準備運動がてら、
「n=2で最小公倍数と最大公約数が5となる確率」
を求めてみましょう。

「最小公倍数が5となる」
ということは、
「“1と5の目のみ”と“5の目のみ”」
の2パターンあるので、
∴1/12

「最大公約数が5となる」
ということは、
「5の目のみ」
なので、
∴1/36


それでは、本題に取り組んでみましょう。

問題文の体裁から、まずある方法を思い浮かべられますが、この場合はどうすべきでしょうか。



【解説】
「~でない確率は?」
と問うているので、
「余事象で考える」
ことをまずは選択しましょう。


(1)
「最小公倍数が素数である」
という余事象を考えると、
「最小公倍数が2か3か5」
となるので、
「“1と2の目のみ”か“2の目のみ”(*1)」、
「“1と3の目のみ”か“3の目のみ”(*2)」、
「“1と5の目のみ”か“5の目のみ”(*3)」、
の3パターンありますね。

このときの数え上げ方としては、
「“1の目のみ”の場合を除外する」
という方向性で考えましょう。

つまり、(*1),(*2),(*3)の各々で、
2^n-1通り」
であることが簡単に求まりますね。

そして“余事象”であることを忘れないようにして、
1-3(2^n-1)/6^n
=(6^n-3×2^n+3)/6^n
=1-1/3^{n-1}+1/2^n・3^{n-1}


(2)
「最大公約数が素数である」
という余事象を考えると、
「最大公約数が2か3か5」
となります。

「最大公約数が2」
となるには、
「2と4と6の目」
しか出ない場合で、
「“4の目のみ”と“6の目のみ”の場合を除外」
して数え上げればいいですね。

「最大公約数が3」
となるには、
「3と6の目」
しか出ない場合で、
「“6の目のみ”の場合を除外」
して数え上げればいいですね。

「最大公約数が5」
となるには、
「5の目のみ」
の場合ですね。

これも同じように“余事象”で考えていることを忘れないようにして、
(6^n-3^n-2^n+2)/6^n
=1-1/2^n-1/3^n+1/2^{n-1}・3^n



このように、“この問題では”、
「余事象で考える」
ことで取り組みやすくなりました(そう考えない方がいい場合もありましたね)。

但し、これまでも何度となく注意を促していますが、検討が面倒であればあるほど、最後の最後で“余事象”で考えていることをウッカリ忘れてしまいがちですね。

特に入試では、悔やんでも悔やみきれないミスとなってしまいますから、肝に銘じておきましょう。