数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

“リケジョ”を羽ばたかせるには…(2023フェリス女学院中・改題)

一昔前では、ごくごく普通に「女子は数学が苦手なことが多いから…」と捉えられてきたように思いますが、こどもたちに教えてきた肌感覚からすると、むしろ逆の印象すらあります。
 
小中高生の時期は、女子の方が精神的成熟が早いことや、言われたことを忠実に守ろうとする姿勢が強いこともあってか、目標が明確に定まっていると、かなり厳しい状況からでもその達成に向けて邁進し結果も残せることが多いように感じます。
 
まっさらに近い状況であればあるほど、数学のような論理的な理解を積み重ねる教科においては、女子の性向の方がフィットすると思います。
 
一方男子の場合は、我が道にこだわることが多く、うまく“くすぐる”ことに成功しさえすれば、ちょっとしたサポートをするだけで、勝手にどんどん急成長を遂げる場合も多いものの、うまく導いていかないと変な迷路に迷い込んでしまうこともあり、女子とは明らかに異なる傾向を見せます。
 
つまり、受験指導などの“目標が明確”な場合は女子の方が扱いやすいことが多いものの、将来ブレークスルーを起こすような指導となっているか否かについては、大きな疑問が残ってしまうのです…。
 
ただ、私がみてきているのは、何らかの入試を突破しようとしているこどもたちなので、まずは現在のような指導を行うしかないのも実情ではあります。
 
大学や専門学校などの、今後の生業を見つけて進んでいく段階で指導する場合は、もっと内容に工夫を凝らす余地や時間的余裕もあるでしょう。
 
むしろその部分こそが大切で、教える側にとっては扱いやすいであろう“リケジョ”を、
「いかに自由気ままに羽ばたかせる方向に持っていってあげられるか」
が大いなる課題なのかもしれません。
 
 
下記は、ある女子校の入試問題なのですが、
「受験生たちが一体どこまで理解し、どこまで解けたのか」
大いに興味を抱かせるところではあります。
 
 
【問題】
A,B,C,D,Eの5人全員が自分以外の誰か1人にメールを送る。
(1)メールを受け取るのが2人であるようなメールの送り方は何通りあるか?
(2)メールを受け取るのが4人であるようなメールの送り方は何通りあるか?
(3)メールを受け取るのが3人であるようなメールの送り方は何通りあるか?
 
 
【解説】
(1)
例えば、
「A,Bの2人が受け取る」
とすると、
「AはBに送りBはAに送る」
必要がありますね。
 
そして、
「残りのC,D,EはAかBに送る」
必要があるので、その送り方は
「2×2×2=8通り」
あります。
 
よって、
「任意の2人の受け取り方は5C2=10通り」
であることから、
∴10×8=80通り
 
 
(2)
まずは、“完全順列”をしっかり理解している必要がありますが、それだけでは解ききれないのが難しいところです。
 
 
まず、
「A,B,C,Dの4人が受け取る」
すると、
「残りのEはAかBかCかDに送る」
必要がありますね。
 
(ⅰ)
A,B,C,Dの4人の中で全員が異なる人に送る」
とすると、
「4人の完全順列は9通り」
であり、
「残りのEの送り方は4通り」
あるので、
「9×4=36通り」
 
(ⅱ)
「残りのEがDに送る」
として、
A,B,Cの3人の中で全員が異なる人に送る」
とすると、
「3人の完全順列は2通り」
であり、
「Dの送り方は3通り」
ありますね。
 
「残りのEの送り方は4通り」
あるので、
「2×3×4=24通り」
 
(ⅲ)
まだ別のパターンがあることに気づけなければ、正解にはたどり着けません。
 
「AとBは相互に送り合う」
とすると、
「E→D,D→C,C→AorB」
または、
「E→C,C→D,D→AorB」
と送ることで題意を満たします。
 
そして、
「相互に送り合う2人の決め方は4C2=6通り」
なので、
「2×2×6=24通り」
 
 
(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ)が全てのパターンとなり、
受け取る4人の決め方は5通り」
であることから、
∴(36+24+24)×5=420通り
 
 
(3)
まず、
「A,B,Cの3人が受け取る」
とすると、
「残りのD,EはAかBかCに送る」
必要がありますね。
 
(ⅰ)〈残りの2人が“1人”に送るパターン〉
例えば、
「D→C,E→C」
とすると題意を満たす場合が、
「4通り」
あり、
「D,Eの送り方は3通り」
あるので、
「4×3=12通り」
 
(ⅱ)〈残りの2人が“2人”に送るパターン〉
例えば、
「D,E→B,C(全2通り)」
とすると、
「A,B,Cの3人の中での送り方は6通り」
で題意を満たし、
「D,Eの送り先の決め方は3通り」
あるので、
「2×6×3=36通り」
 
 
(ⅰ),(ⅱ)が全てのパターンとなり、
受け取る3人の決め方は5C3=10通り」
であることから、
∴(12+36)×10=480通り
 
 
恐らく理解しにくいと思います。
中学生以上でも混乱するような内容となっており、小学生がどこまで対応できたのか、疑問さえ感じてしまう内容となっています。