数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

「2種類の比」の扱い方に慣れよう!

 
小学生は、基本的には方程式を用いて問題を解くことはないので、特に“受験算数”においては、「比」を駆使しながら問題に取り組むことになります。
 
そこで、ややテクニカルな手法を用いたりする場合もあるので、それに馴染めないと、“受験算数”が嫌いになってしまう原因にもなってしまいます。
 
確かに、“逆比”まで駆使してガチャガチャ解くような問題の場合は、
「方程式で解けば簡単なのに…」
と同情してしまう例が結構あるのも事実です。
 
 
今回の問題はいわゆる「整数問題」ですが、その条件設定に比が用いられているだけなので、何とか理詰めで解ききってほしいところです。
 
高校入試問題ではあるのですが、不定方程式を立てるまでもない内容なので、小学生のように解いても時間的な差はないでしょう。
 
 
【問題
あるバスの乗客の大人とこどもの人数比は7:4であった。
次の停留所で降車する人はおらず、新しく大人とこども合わせて8人が乗車してきたところ、大人とこどもの人数比が8:5となった。
バスの最大乗車人数が55人のとき、停留所を出発した後の大人とこどもの人数はそれぞれ何人か?

一度は解いておくべき計算問題

今回も、どこかで見かけたことがある人も多いと思われるものの、初見の人にとっては結構難儀してしまうような「計算問題」を取り上げてみましょう。
 
 
例えば、
 
1/2+1/6+1/12+1/20+1/30
 
という計算問題を出されたら、普通に通分して計算していく人も多いかもしれません。
 
このぐらいの計算だと、その方法でも全く構わないのですが、次のような計算になると「面倒だなぁ」と感じてしまうのではないでしょうか。
 
3/4+3/28+3/70+3/130+3/208
 
このような計算は、一度取り組んでおくと頭に残るはずなので、“頭の中の引き出し”を一つ増やすつもりで取り組んでみましょう。
 
 
なお、入試で
“厄介そうな計算問題”
が出題されたら、まずは
“何らかの計算の工夫”
を考えるのは鉄則でもありますが、難関校になると、時にはゴリゴリの厄介な計算をさせる場合もありますから注意しましょう。
 
 
※今回の計算は“瞬殺”できるところがポイントです。
その工夫の原理をしっかり理解しておくことが、“頭の中に残す”ことにつながります。
 
 
最初の式は、
「1/1×2+1/2×3+1/3×4+1/4×5+1/5×6」
と捉えることができれば、
「(1/1-1/2)+(1/2-1/3)+(1/3-1/4)+(1/4-1/5)+(1/5-1/6)」
と変形できます。
 
つまり、どんどん相殺されていくので
「1/1-1/6」
を計算すればいいだけとなり、すぐ
∴5/6
と答えが出てきますね。
 
 
初見の人にとっては、言われてみれば納得できるものの、なかなか気づきにくい変形でもありますね。
 
ただ、一度知っておけばもう大丈夫です。
 
そのためにも、次の計算に取り組むことで、
“どのような場合にこのような計算が可能となるか”
をしっかり理解しておきましょう。

図形どうしの面積の差

この時期は、なぞなぞのようなちょっとオモシロイ問題でリフレッシュしてみましょうか。
 
 
ある図形の面積を求めること自体は難しいものの、
「ある図形とある図形の面積の差」
であれば求めることが可能な場合があります。
例えば、
 
【問題】
正三角形ABCの辺AC,AB上にそれぞれ点D,Eを、
「∠DBC=∠ECB=45゜」
となるようにとり、
「BD=10」
とする。
線分DBと線分ECの交点をFとするとき、
「△FBC-四角形AEFD」
を求めよ。
 
 
「“定規直角三角形”の3辺比」
は中3生以上であれば知っているはずですが、中2生以下でも、部分的な辺の比であればわかりますね。
 
さらに、
「直角二等辺三角形の斜辺と他の1辺の比」
中2生以下では求められないものの、例えば、
「斜辺10の直角二等辺三角形の面積」
であれば求めることができるはずです。
 
上記のことがわかっていれば、誰でも解くことができるので、この類の問題が初見であれば、一度解いておくといいでしょう。
 
 
【解説】
例えば、辺AC上に、
「∠GBA=45゜となる点G」
をとると、
「△BDG=10×5×1/2=25」
が求めるべき
「△FBC-四角形AEFD」
の値となりますね。
 
まだ、
「ん?」
となっているのであれば、例えば
FBCと四角形AEFDにそれぞれ△CDFを加える」
ということを試してみましょう。
 
 
(2024麻布中・改題)
 
 
 
★今回のポイントとしては、
「相殺される部分を“見える化”する」
ことですが、さらには
「相殺される部分をつくり出す」
という操作も今後大切になってくるので覚えておきましょう。

“不向きな”こどもには無理強いしないこと!

まずは、次の問題を読んでみてください。
 
 
【問題】
A地点とB地点を結ぶ一本道を、
「PさんとQさんはA地点からB地点へ」、
「RさんはB地点からA地点へ」、
それぞれ一定の速さで移動する。
QさんとRさんはPさんが出発してから15分後に出発し、PさんとRさんがすれ違ってから2分40秒後に、QさんとRさんはC地点ですれ違い、PさんとQさんはB地点に同時に着いた。
QさんとRさんの速さの比を3:2とするとき、PさんがC地点を通過したのは、QさんとRさんがすれ違う何分前か?
 
 
これは、定番とも言える分野の中学入試問題をアレンジしたものなのですが、はっきり言って大人でも頭が混乱すると思います。
 
しかし、受験算数で鍛えてきた“受験戦士”たちにとっては、それほど驚くべき問題ではありません。
 
なぜなら、何度も解いたであろう内容であり、“この類の問題に対応する術”を知っているからです。
 
 
しかし、中学受験を経験していない学生や、学生時代からはそれなりに月日が経った大人にとっては、悪戦苦闘する人の方が多いでしょう。
 
「方程式を立てれば解けるでしょ」
と臨んでみたとしても、その方法で解くにはかなり厄介だからです。
 
 
一番最初にこの類の問題を考えついた人は、「画期的!」とほくそ笑んだかもしれませんが、所詮は「いかに解けないように工夫するか」が目的でしかなく、“難解ななぞなぞ”を出題して鼻高々になられたところで、白々と“拍手”を送るだけです。
 
その対処法を一度知ってしまえば何てことはなく、またたとえ知ったところで、
“今後の何らかの学びに寄与する訳でもない”
ということをしっかり理解しておくことは大切です。
 
入試という一発勝負の場での、
“人を篩にかけるためだけの手段”
に過ぎず、特に受験算数を得手としないこどもたちが、必死な思いで対処法をマスターしたところで、得るものは微々たるものでしかありません。
 
 
ただ、いわゆる
“地頭のいいこどもたち”
は、このような問題を解くことに
“脳が快感を覚える”
ので、難解であればあるほど、どんどんのめり込んでいきます。
 
だから、
“受験算数を好物”
としている場合が多いです。
 
 
しかし、受験算数にはあくまで
“向き不向きがある”
ということを、小学生のお子さんがいらっしゃる保護者の方々にはしっかり理解しておいていただきたいと思います。
 
もしも、
「“不向きな”お子さんに無理強いする」
ようなことをしてしまうと、
“受験算数は毒にもなり得る”
ということを…
 
 
 
【答え】6分前
 
いわゆる
“ダイアグラム問題”
ですね。
 
「グラフ上で平面幾何の原理(相似)を用いて解く」
という異種分野の融合問題となります。
 
それさえ知っていれば、あっさり解けてしまいますね。
 
 
※今年のある中学校の入試問題なのですが、その学校を批判している訳では全くなく、どこの中学校でも普通に出題される問題です。むしろこの学校の入試問題は、良問が多く模試がわりに解かせることを勧めています。

補助線の引き方を練習する問題

数学の幾何問題を解く際の重要な一手ともなる「補助線」。
 
中には、「え~っ!そんなところに?」と文句をつけたくなるようなアクロバティックな補助線が必要な問題もありますが、大概の入試問題は、論理的に考えていけば引ける補助線で対応できるはずです。
 
 
問題文がわずか1~2行であっても、ダラダラの長文であっても、
与条件こそが全て”
というところが、数学の問題を取り組みやすいものへとしてくれていますね(現実社会の諸問題とは違って…)。
 
ですから、与条件を漏れなくチェックしたら、幾何問題においては、それをできるだけ忠実に反映した図を描くことが解決へ向けての近道となります(“視覚情報”は結構重要です)。
 
その図を元に考えれば、引くべき補助線が何となく浮かんでくるはずです(多少は慣れが必要かもしれませんが…)。
 
 
今回の問題は高校入試レベルではありますが、「三角形の合同を導ける」ならば誰でも解くことができます。
 
一見難しく感じるかもしれませんが、与条件をよく読んで取り組めば、「補助線をどこにどのように引けばいいか」がわかるはずです。
 
決してアクロバティックなものではなく、
“論理的に考えてごくごく自然に浮かんでくるもの”
でいいのです。
 
※それでも太刀打ちできない問題であったならば、入試の際には“後回しにすべき問題”だということです。
 
 
 
【問題】
AB>ACの△ABCの辺BCの中点をDとする。
線分AD上にAC=BEとなる点Eをとり、さらに点Cから線分ADに下ろした垂線の交点をFとする。
このとき、△ABEと△CDFの面積比を求めよ。
 
 
 
これは、今年のある高校入試問題から思いついた問題ですが、前述した通り“現中2生”でも十分に解ける内容です。
 
まずは、与条件を反映した図を大きく描きましょう。
 
当然、人によって描く三角形に違いはあるものの、与条件を反映してさえいれば、誰でも同じ答えに帰着します。
 
それを理解してもらうためにも、本ブログでは「図を自ら描いて解く」体裁の問題文にしています。
 
 
(注記)
「小学生」または「注意不足の中学生」に向けて記しておきます。
 
“線分”と“直線”の違いをしっかり把握した上で問題に取り組みましょう。
 
「線分AD; 点Aと点Dを通る直線のうちA~D間のみの部分」
であり、例えば
「直線AD; 点Aと点Dを通る端点のない無限な一直線」
を意味します。
 
ですから、
「線分AD上に点E,Fがとれない図」
を描いて考えるのは、与条件と合致しないことになります。
 
つまり、いくら人それぞれとは言え、
「BD(=CD)>ACとなる△ABCを描いて考えてはいけない」
ということです。
 
入試などでは、上記のようなミスを防ぐために、不必要とも言える過剰な条件を記すこともありますが、日頃から
「問題文に記された与条件を正確に読み取る」
訓練はしておきましょう。
 
 
 
【解説】
引くべき補助線は、
「点Bから直線ADへの垂線(交点をG)」
ですね。
 
「AC=BE」
という与条件から、
「△ACFと合同な直角三角形をつくる」
という発想は“ごくごく自然なもの”ですね。
(※もし同感できないならば、もう少し“慣れる”訓練を積む必要があるでしょう。)
 
すると、
「△BGD≡△CFD」
から、
「GD=FD」(*1)
となります。
 
前段の
「△ACF≡△EBG」
より、
「AE=FG」(*2)
が導けるので、(*1),(*2)より
「AE:DF=2:1」
 
△ABE:△CDF=2:1

“美しい”整数を調べてみよう!

入試もほぼ終わり余裕のあるこの時期、「整数」に首を突っ込んでみてはいかがでしょうか。
 
整数に関する様々な性質は、何かを習った後でないと学べないものではなく、いつでも誰でも学び始められます。
 
ですから、早いうちに取り組み始めた方が、もし興味を持てるのであれば、今後に色々と役立てられます。
 
その過程で、もし“美しさ”まで感じることができれば、「整数問題」を得手とする道の入口に立っていると言えるでしょう。
 
 
例えば、
「その数自身を除いた全ての約数の和」
で表すことができる、
完全数
は知っている人も多いかもしれません。
 
初見の人のために記しておくと、最小の完全数は、
「6=1+2+3」
で、その次は
「28=1+2+4+7+14=1+2+3+4+5+6+7」
となります。
 
どうでしょう、“美しい”と感じますか?
 
では、
「その次の完全数はいくつになるか」
調べてみましょう。
 
 
また、古くから親しまれてきた
小町算
も“美しさ”を感じられるものの一つでしょう。
 
中学課程に入ると「負の数」を扱うようになるので、その導入で例えば
「1~8の8個の異なる1桁の整数と+,-を用いた式=0」、
「12□3□4□5□67□8□9=100」
となる式を作ったりすることでしょう。
 
 
毎年、かなりの難問になることもある「最後の大問」が十八番である都立西でも、“美しい”整数に関する出題がありました。
 
先日言及した「都立(一般)入試/数学の易化」と同様の影響があるのか、今年の都立西の最後の大問も比較的取り組み易い内容でした。
 
I.C.U.の入試問題を彷彿とさせる長文の出題形式でしたが、多数の文字に振り回されなければ、内容的には平易なことを問うているに過ぎません。
 
毎年かなりの難問となる最後の設問は、
「(a+b+c)の3乗=100a+10b+c」(*1)
(aは1~9の整数、b,cは0~9の整数)
となる整数があることに言及した上で、
「(p+q+r+s)の4乗=1000p+100q+10r+s」(*2)
(pは1~9の整数、q,r,sは0~9の整数)
を求めさせるものでした。
 
(*1)は、いわゆるデュードニー数で、別にこの名前やどんな数かなどは知らなくても、何の問題もありません。
 
a,b,cの条件からは、
「1≦a+b+c≦27」
となりますが、
「3乗して3桁の整数」
でなければならないので、
「5≦a+b+c≦9」
とわかりますね。
 
ここまで絞り込んでおけば、後は5個の計算をするだけで、
「(5+1+2)の3乗=512」
と導けますね。
 
同様に考えていけば、(*2)を満たす整数も簡単に求められるはずです。
 
 
かつての偉人たちによって、様々な“美しい”整数が見つけ出されており、それらを調べていくだけでも良質な勉強となることでしょう。

都立・神奈川県立入試/数学(2024)を概観して

コロナ禍など気にすることもなく、この2年間なぜか“上振れ”した内容で実施されてきた神奈川県立入試/数学でしたが、先日実施された今年の入試問題は「ほぼ従来通りのレベル」に戻ってきた感があります。
 
依然として「しっかり考えさせる内容」ではあるものの、幅広い受験生達が立ち向かえるレベルであったと思います。
 
今年の受験生は、ほぼ通常通りの状況で中3課程を学んできたこともあり、平均点も60点くらいまでアップするのではないでしょうか。
 
 
一方【(一般)都立入試/数学では、ずっと易化が続いており、神奈川県立との内容的なレベル差がかなり目立っていました。
 
「なぜだろう…?」と、このところの一般都立入試の平均点を調べてみると、「あのレベルの問題でこの点数?」という状況が続いており、問題作成サイドとしても「易化を続けるしかない…」という状況だったと想像されます。
 
「コロナ禍での難化傾向の入試問題」を乗り切ってきた神奈川県の受験生に比して、「易化を続けた入試問題」に対しても結果を残すことができなかった都内の受験生は、
“コロナ禍の影響をかなり受けている可能性が高い”
と判断されます。
 
おそらく、塾や家庭教師などから指導を受けてきた場合は何とかリカバーできたとしても、ずっと家庭で独自勉強をせざるを得なかった生徒たちの学力低下が、思いのほか激しかったのではないでしょうか。
 
進学指導重点校などを受験する“いわゆる成績上位グループ”の生徒たちは、各校が作成した独自問題で受験することになるので、幅広い都内の受験生が対峙する【(一般)都立入試/数学】では「内容的には易化しているのに平均点が低い…」状況が続いていたのだと想像します。
 
逆に言えば、「駒場・小山台・町田など」の一般問題で受験する学校の場合は、「数学では(皆高得点で)差がつかない」状況が続いていたのではないでしょうか。
 
神奈川県立の一週間後に実施された今年の都立入試のレベルも、案の定「さらに易化」したものとなっていました。
 
「このレベルで本当に大丈夫なの…?」と心配してしまうくらいですが、前年までの結果を踏まえれば、問題作成サイドとしてはやむを得ない状況だったのでしょう。
 
しかし都内の受験生も、今年度はほぼ通常通りの状況で少なくとも中3課程を学んできたこともあり、今年こそは平均点が何とか回復してくると思われます。
 
 
「コロナ禍に伴うこどもの学力低下への影響」は思いのほか大きいと考えざるを得ないことがわかってきたので、指導する側としては改めて「慎重に接する必要性」を感じた次第です。