数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

大変な「イモ掘り」をさせるなら“カタルシス”を!

学校などの行事で「イモ掘り体験」に行ったのであれば、たとえ泥だらけになって苦労したとしても、必ず誰でもイモを掘り当てられるようになっているはずですね。
 
しかし、入学者を選別しなければならない入試においては、そのような甘いことを言ってはいられません。
 
中には、“全身泥まみれ”でイモを掘り当てる人も出てくるでしょうが、学校側がみたいのは
「いかに工夫して簡単に“掘り当てる”か」
です。
 
工夫の余地が全くない(既習事項を考慮した上で)ような条件で、“泥まみれのイモ掘りの速さ”を競わせたところで、効果的な評価へとつなげることは難しいでしょう。
 
特に受験算数などで、ゴリゴリ書き出して求めるしかないような設定内容の問題が時々見受けられますが、それが入試問題であるならば、単に制限時間を消費させるだけの設問でしかなく、それが解けたからといって評価できる側面は微々たるものです。
 
以前にも記した通り、時間制限さえなければ、例えば中高生が取り組むような「整数問題」を解くことは小学生にもそう難しいことではありません(もちろん、小学生にもわかるような設問内容に変換してあげる必要がある場合もありますが)。
 
対象が誰であっても、整数問題を解かせる意義は、様々な整数関連の性質をもとにして、
「その論理的な絞り込み方をいかに見いだすか」
にあります。
 
最終的には、多少の“イモ掘り”のような作業が必要になることはあるものの、そこに整数問題の出題意義はないのです。
 
“イモのないイモ掘り”は、さすがに入試においてはあり得ませんが、苦労させるのであればそれに見合った見返り、いわば“カタルシス”のようなものを感じさせてこそ入試難問の醍醐味でしょう。
 
ああでもない、こうでもない…と散々悩んだ末に、
「この方法だ!」
と何とか制限時間内に解法に気づけるような設定にしてあってこそ、難問に挑む意義があり、その上で見事に解ききった受験生こそ栄誉とともに評価されるべきでしょう。
 
そこで、整数を題材とした問題を通して、まずは制限時間を取っ払って、こどもも大人も“とことん考え抜く”訓練をしてみましょう。
 
 
 
「1より大きな1桁の整数をn」
として、
「1~nの整数を1つずつ書いたn枚のカード
があります。
 
これらからカードを無作為に選び出し、左から順番に横一列に並べます。
 
そして、
「カードに書かれた数をつなげたひとかたまり」
を、
「n桁の整数A」
と捉えます。
 
その整数Aに、次のような操作を行います。
 
【操作
1.左端のカードの数をmとする
2.左からm枚のカードを順番に取り出す
3.取り出したカードの順番を逆にして左から順に戻し新たなn桁の整数をつくる
 
その操作を、
「左端のカードの数が1」
となるまで繰り返して終了とします。
 
なお、もし最初の整数Aにおいて、
「左端のカードの数が1」
であるならば、
「操作は行わず(0回)終了」
とします。
 
 
例えば、
「n=4,A=3421」
に1回操作を行うと、
「左端のカードが3なので、左から3枚のカードを取り出し、順番を逆にした上で戻す」
ので、
「2431」
という新たな整数がつくられます。
 
まだ左端のカードの数が1になっていないので、操作を繰り返していくと、
「3421→2431→4231→1324」
という経緯をたどるので、
「3回操作して終了」
となります。
 
 
では、
「n=5で操作を1回以上行える整数A」
について考えましょう。
 
そこで、
「整数Aに操作を行い終了したときの整数」
をみてみると、例えば
12345や14235」
は存在したものの、どんな整数Aで操作してみても、例えば
13254」
は存在しませんでした。
 
そこで、全ての整数Aについて、操作終了時の整数を調べてみると、
「13254も含めて全部で9個の整数」
が存在しないことがわかりました。
 
この9個の整数の中で、3番目に大きな整数を求めてみましょう。
 
 
 
これは、ある高校の入試問題におけるオーラスの設問(恒例の難問)です。
 
おそらく、制限時間内に解ききった受験生は少なかったと思われます。
 
しかし、制限時間をなくして取り組むならば、小学生でも太刀打ち可能なレベル(ちょっと背伸びになるかも…)ではあるでしょう。