数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

古典問題に学ぼう!

どこかで聞いたことがあるような、ちょっと「ん?」と感じてしまう古典問題。
 
以前にも「油分け問題」などを扱ったことがありますが、長く取り上げられ続けているということは、その裏に「なるほど!」と思わず声が漏れてしまうような論理が潜んでいるからこそですね。
 
初見の人のために、その“論理のからくり”を改めて考えてみることにしましょう。
 
 
【問題】
ある村の三兄弟が親から17頭のらくだを相続することになった。
しかし遺言には、
「長男には1/2、次男には1/3、三男には1/9を分け与える」
とあり、三兄弟はどうしたらよいか悩んでいた。
そこへ村の長老が現れ、
「わしのらくだを1頭貸し与えてやれば解決するじゃろ」
と、
「合計18頭になったらくだの1/2にあたる9頭を長男に、次男には1/3の6頭、三男には1/9の2頭」
をそれぞれに分け与え、残った1頭を、
「これは貸した分だから」
と連れ帰っていった。
さぁ、この長老の裁きは正しいだろうか?
 
 
正しいか正しくないか、いずれにしてもその理由こそが大切ですね。
 
そして“論理”を解明できたら、同様な例題を思いつけるか(さらには一般化できるか)、考えを深めてみましょう。
 
 
 
【解説】
当然ながら、
「生き物なので分割することができない」
ので悩んでしまう訳ですね。
 
まず、
「遺言自体がおかしい」
ということには気づくと思います。
 
「1/2+1/3+1/9=17/18」
だからですね。
 
しかし、長老が1頭貸すことできれいに3人に分割でき、なおかつ長老の1頭も無事本人に戻ってくるので、「お見事!」と言いたくなりますよね。
 
結論から言うと、
「分割できない生き物の相続なのでこれで皆納得できる“名裁き”」
となるでしょう。
 
それぞれの「相続割合」は遺言とは異なってくるものの、それぞれの割合に応じて案分されて付加されることになり、誰も異存のない分け方だからです。
 
これは、数学的に解決するという側面よりも、
「皆が気持ちよく納得できる解決法」
であり、理詰めをもとにしながらも、このような機転を利かせることこそが、人間社会で生きていく上では大切な頭の使い方ですね。
 
 
しかし、実に様々な情報に簡単にアクセスできてしまう現在、
“一見論理的なからくり”
を用いて詐欺をはたらく悪しき者共もはびこっていますので、とにかく
“一見おいしそうな話”
には十分に注意しましょうね。
 
 
 
【他の例題
例えば、
「19頭→1/2,1/4,1/5の場合」
など色々と考えられますね。
 
さらに突き詰めたいならば、
「一般化するとどうなるか」
まで考えてみてもいいでしょう。