数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

小学生に「小数で割る筆算」で学ばせること

小学生に、
「割り算の意味」
を学ばせたら、
「小数で割ることの意味」
まで拡張させて理解させることは大切なことです。
 
また、基礎的学力として
「筆算での計算力を高めておく」
ことも不可欠なことです。
 
円周率のところでも、
「“3.14”を用いて面倒な計算をする」
ことも、その一環とも言えます。
 
 
先日、小学生用の問題集をみていて、
小数÷小数で商を小数点以下まで求めた上で余りまで求めさせる
計算問題に目がとまりました。
 
このような問題は、
「筆算の原理を学ばせるためだけの計算」
に過ぎず、計算自体には何の意味もありません。
 
 
まず、
「“割る数が小数”である場合の筆算」
の方法を学ぶことは大切です。
 
大人になっても、小数を用いた計算をする機会は多々あり、筆算もできないようでは暗算もしにくくなり、何より「基礎的な一般教養」に欠けていることを痛感せざるを得ないことでしょう。
 
ただ、
「“割る数が小数”である場合の筆算」
で、
「商を“小数第□位まで求める”
ことまではできて当然ですし、実生活においても必要になることが多いですが、
「(上記の計算をした上で)“余り”まで求める」
必要がある機会はまずありません。
 
なぜなら、
「意味がない」
からです。
 
「“余り”を求めるのであれば商は自然数まで」
であるべきですし、
「商を“小数第□位まで求めさせる”」
のであれは、さらに何かを要求するなら
「“四捨五入”して答えよ」
しかありません。
 
 
 
例えば、まず
3.4567÷0.12
という計算を筆算でしてみてください。
 
但し、
「商は小数第2位までとし余りまで求める」
としましょう。
 
答えは、
「3.4567÷0.12=28.80余り0.0007」
となりますね。
 
大人だと、
「余りを間違えてしまう」
場合も少なくないでしょう。
 
小学生に教える際にも、
「小数で割る場合の筆算の方法」
と、
「余りの求め方」
を順番に論理立てて説明してあげる必要があります。
 
「割り算の筆算の原理」
を理解することは大切なことですが、余りの説明のところでは理解に苦しむ小学生もいることでしょう。
 
どうしても難しいと感じるならば、学年が進んだ段階で再度教えてあげればいいことで、どうしても初見の段階で理解しなければいけないことではありません。
 
さらに言えば、中学生になってから改めて教えることで理解しやすくなるかもしれません。
 
はっきり言って“意味のない計算”をさせているに過ぎないので、その段階で教え込むことに固執する必要はないのです。
 
若い先生などの中には、頑張って教えようとするあまり、教えられる側のこどもを“算数嫌い”にさせてしまっているケースもあるのではないか…との危惧も感じてしまいます。
 
 
 
では、
3.4567÷0.12
という計算がどのような意味を持っているか考えてみましょう。
 
 
まず、
「3.4567を0.12等分する」
という考え方は一般的ではないので、
「3.4567の中に0.12がいくつあるか」
という計算だと考えるべきですね。
 
例えば、
3.4567リットルの液体を120ミリリットルずつ容器に分けていくとすると容器はいくつ必要か?
という問題を解くための計算が該当しますね。
 
すると、計算結果から
「容器は28個必要(96.7ミリリットル余る)」
となりますね。
 
つまり、
「“余り”まで求めさせるのであれば商は自然数まで」
とするのが現実的で、今後「数学」を学んでいくにあたっても意味のあることです。
 
 
また、
全体量の12%が3.4567リットルとなる場合の全体量は?
のように、
「□×0.12=3.4567」
という計算式が成り立つ場合の□を求める際のように、
「割り切れても小数点以下が長かったり、割り切れなかったりする場合」
には、
「商を小数第□位まで求めさせる」
ことはよくあるケースですね。
 
このような場合に、
「“余り”を求めることに意味はない」
のは明白ですね。
 
そして、その際によく用いられるのが“四捨五入”となる訳です
 
 
つまり、
小数÷小数の商を小数第□位まで求め余りも求めよ
という問題は、
「意味がない上に理解に苦しむこどもが出てくる可能性がある」
という類の計算をさせているに過ぎないのです。
 
 
 
大人でも正しく計算できなかった人がいてもおかしくないように、高等数学の分野でもないのに、実生活に必要としないものだと理解しましょう(中学受験をする予定の小学生ならば理解する必要性はありますが…)。
 
ですから、このような
「小数で割って“余り”を求める筆算」
の理解に苦しんでいる小学生の皆さんは、
「いずれ理解できればいいもの」
と気にしないで構いませんよ。
(※「小数で割り進める筆算」の方法はしっかり理解しましょうね!)
 
とにかく、小数どうしの計算は面倒ですし、
「小数の形では完全に表せない数」
もあるので、中学生以降は基本的に、
「小数は分数の形で扱う」
ようになり、
「割り算は掛け算に直して計算」
することで随分と手間を減らすことができるようになります。
 
小学生のうちは、「計算力をつけるため」だと思って、頑張って「小数の計算」に取り組みましょう。
 
計算力さえつけてしまえば、例えば「“3.14”を用いた計算」を卒業して「“π”を用いた計算」を行えるようになる日ももうすぐです。