数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

論理を使いこなそう!(“鳩の巣原理”編)

数学を学び進めていくと、
「論理的な思考展開力」
の大切さをより痛感することになります。

その力をつける扉を開けてくれるのは、
「じっくりとことん考える」
姿勢です。


効率性を重視せざるを得ない授業環境では中々難しいのですが、本来ならば皆で
「あーでもない、こーでもない」
と取り組んでこそ、
“じっくりとことん考える楽しさ”
を味わうことができます。

いわゆる「数学が好きではない」ような子の発想が議論を活性化させたり、それがきっかけとなって数学に興味を持ち始めたりすることもあるのです。

しかし現実には、「じっくりとことん考える」過程は各自の個人勉強に任せざるを得ないのが実情でしょう…。


まぁそれはさておき、次の問題を考えてみましょう。


【問題】
あるラグビーチームの先発メンバー全員に、
「生まれた日の曜日と時間帯(午前or午後)」
を尋ねたとき、
「( )曜日の午( )」
の返答が同じになる人がいる確率を求めよ。

(※昨年来の“にわかファン”向けに付け加えておくと、ラグビーは1チーム15人でプレーします。)


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「AとBの2本のくじ」があり、そのうち1本はあたりだとします。

当然、
「AがはずれだとするとBは必ずあたり」
ですね。

これも一つの“論理”です。

このような“一見単純な論理”によって、問題解決の糸口を見つけられることもあります。


数学で「論証問題」に取り組みながら、“論理構築のための基礎力”を磨いていくことが大切です。


【解説】
「返答が同じになる人がいる」
ということは、厳密には、
「返答が同じになる2人(以上)が少なくとも1組いる」
という意味ですね。

ここで、
「少なくとも1組いる」
ということは、余事象の
「1組もいない」
場合を考えるのが定石でしたね。

しかし、それでも楽に考えることは難しいですね。


ここで、ある“当たり前の論理”を用いて考えてみましょう。


「巣箱3個に対して鳩が4羽」
いたとします。
この鳩が全て巣箱に入ったとき、
「少なくとも1個の巣箱には鳩が2羽以上入っている」
状態になっていますね。
これは、どんな場合でも成り立っていることを確認しましょう。

一般に、
「n個のものにn+1個のものを割り振る」
場合に成り立ちますね。

これを、
“鳩の巣原理”
と呼びます(別の呼称もあります)。


この“当たり前の論理”を用いれば、今回の問題はすぐに解けるはずです。

「曜日」と「午前・午後」の組み合わせは、
7×2=14通り
ありますね。

一方、チームの人数は15人です。

つまり、
「巣箱14個と鳩15羽」
の状況と同じなので、
「必ず同じ返答の人がいる」
ことがわかりますね。

∴確率は1 (100%)

正四面体の切断面の作図

各種の「作図法」は中学課程で学びますが、簡単な作図法ならば、小学生でも原理を理解できると思います。

例えば、
「正三角形の作図」
をみてみましょう。

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正三角形とは、
「3辺の長さが等しい三角形」
なので、
「なぜその方法で作図できるのか」
は理解できますね。


後は、図形の性質を応用できれば、次の問題もできるはずです。


【問題】
正四面体ABCDの体積を二等分する切断面である△ADMを考える。
線分ADのみが与えられている状態から、できるだけ少ない手数で点Mを作図せよ。


参考:「正四面体の切断」
https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2020/04/21/090305


【解説】
手数を考慮しなければ色々と考えられますが、最小手数ならば下図の方法でしょう。

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(コンパス:3回、定規:1回)


中学生は、現段階では、
「辺MA,MDの長さを求める」
ことができなくても、作図はできるはずですね。

なぜならば、小学生レベルの
二等辺三角形・ひし形の性質」
が理解できていれば、作図は可能だからです。

567V-333W=414

あらゆる世代の人たちが、困難を伴いながらも様々な行動変容を続ける中、一方で「いつまで続ければ良いのか…」との不安が拭えないのも事実でしょう…。


大風呂敷を広げる意味もないので、「こどもたちへの教育」に関する問題点について一言。

はやりの「オンライン授業」を続けるにも、実際に対面するコミュニケーションができないことによる限界が明らかにあります。

また、一方向の「映像授業」も、義務教育レベルでは“最大公約数的な内容”にならざるを得ず、いわゆる“できる子”にとっては苦痛に近いくらいのものでしょう。

かといって「YouTube」等で発展的な内容のものを探そうとしても、実際の中身は全て観てみないことには是非を判断できず、それがもし「冗長かつ内容も非」だった場合は「時間を返せ!」と言いたくなるでしょう。
「自分に合った信頼できる内容のもの」に出会うまでが、大変なのではないでしょうか…。


とにかく、このままでは明るい未来は見えてこないので、
「“3密”を避けて自らの感染を防ぐ」
ことで、少しでも収束の方向へと向かってくれることを待つしかないのでしょう…。


全くの余談ではありますが、
「新型コロナウィルス感染拡大を防ぐには“3密”を避けるのが良いよ」
ということで、
「567V-333W=414」
という“語呂合わせ不定方程式”がまた浮かんでしまう今日この頃…。

因みに、上記のような不定方程式の整数解を求めるには、中学生以上ならばその方策を持ち合わせているでしょうが、小学生にはちょっと厳しいですね。
※くれぐれも、上記の解を力業で求めようとするのは、時間の無駄にしかならないのでやめましょう。

どうしても解きたいならば、
ユークリッドの互除法
について調べてみましょう。

それを応用すれば整数解を求めることができますが、いずれにしても小学生には“発展レベル”でしょう。

なお中3生以上は、「整数問題」に関しては独学でも発展的に学べる分野なので、この休校期間にこそ取り組んでおくことを勧めます。

将来大学受験を考えているならば、必ず役立つ時がきます。

正四面体の切断

前回の直方体のように、
「柱体の切断」
は中級編の立体問題です。

それに対して、
「錘体の切断」
は中~上級編となります。
(※切断面が複雑になる場合が上級編)

しかし、今回の、
「正四面体の二等分切断」
は、小学生でも十分に考えられる内容です。


まず最初に頭に浮かぶのが、下図のような切断方法でしょう。

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(※点Mは辺BCの中点)


他にも無数にありますが、次のような場合は、どのように切断すればいいでしょうか。


【問題】

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1辺2の正四面体ABCDの辺BC,CDの中点をそれぞれM,Nとする。
この2点M,Nを通る平面で正四面体を切断し、体積を二等分したい。
このとき、他にどのような点を通るように切断すればよいか?
また、その切断面の面積を求めよ。


【解説】
正多面体に慣れ親しんでいれば、難しくはないはずです。

正四面体は“正多面体”なので、
「辺DAまたは辺ABの中点」
を通るように切断すれば二等分できることに気づけるようになりましょう。

そして、分けられた2つの立体は、全く同じ立体となりますね。

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辺DA,ABの中点をそれぞれO,Pとすると、
「MN=NO=OP=PM=1」
となりますね。

中3生ならば
「中点連結定理」より、
小学生でも、
「△CMN,△DNO,△AOP,△BPMが正三角形」
となることからわかりますね。

また、詳細は省略しますが、
「△OBC≡△PCD」、
「線分MOは二等辺三角形OBCの中線」、
「線分NPは二等辺三角形PCDの中線」、
であることから、
「MO=NP」
となりますね。

よって、四角形MNOPは、
「4辺の長さが等しく、対角線の長さが等しい」
ので、
「正方形」
となります。

∴四角形MNOP=1×1=1

直方体の切断

意外と勘違いしている人が多いので、再確認しておきましょう。

「立体を頭の中だけで捉える」
または、
「立体の見取り図を描く」
のが苦手な人によく見受けられる勘違いです。

まず、次の問題を解いてみましょう。


【問題】

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直方体ABCD-EFGHがある。
辺BF上の任意の点をPとし、3点A,G,Pを通る平面でこの直方体を切断する。
このとき、点Cを含む方の立体の体積は、直方体の体積の何倍か?


さて、よく見受けられる勘違いとは何なのでしょうか…


【解説】
基本的な「立体の切断」なので、すぐわかると思います(既習ならば)。

答えは「1/2倍」ですね。


まず、この切断平面は、
「必ず辺DHと交わる」
ので、その交点をQとします。
(※点Pに対応して点Qは1点に定まりますね。)

すると、直方体の切断面は、
「平行四辺形APGQ」
となり、2つの六(or五)面体に分けられます。

どちらも、いわゆる、
“断頭四角柱”
と捉えられ、同じ体積だと簡単にわかりますね。
(※点Pが辺BF上のどこにあっても同じですね。)


そのことから、
「2つの六面体は同じ立体」
と、よく勘違いされますが、
「“鏡像”の関係にある立体」
となります(下図参照)。

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(※但し、五面体となる場合は全く同じ立体となりますね。)

サクッとできればOK!(整数基本編)

(2020/4/17更新【解説】)

「A=12625」と答えた人は、しっかり解き直しましょう。
また、上記に該当していなくても、Bの正答を出せていない場合もあります。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

西暦年数“2020”を用いて、整数に関する基本問題をしっかり解ききれるかチェックしましょう。

※【問題-1】は、そのまま小学生用の問題ともなります。
※【問題-2】は、「平方根」の基本概念のチェック問題ですが、未習ならば後日トライしてみましょう。


【問題-1】
整数A,Bが、
「2020×A=B×B」
を満たすとき、Aに当てはまる5番目に小さな数を求めよ。
また、そのときのBに当てはまる数も求めよ。


【問題-2(中3生用)】
整数A,Bが、
「2020×A=B×B」
を満たすならば、
「√(2020A)=B」
が成り立つか?
必ず成り立つならば“真”、
必ずしも成り立たたないならば“偽”、
と答え理由も述べよ。


いずれも、時間制限を設けて出題したい問題ではありますが、サクッと解いてみてください。



【問題-1/解説】
まず、「整数」を正しく理解しているかが問われます。

Aは、右辺の式から、
「負の数ではない」(*)
ことはわかりますが、
「0である場合」
を忘れてはいけませんね。
(※小学生は「負の数」を知らないので、(*)のチェックは不要です。)

そして、
「2020=2×2×5×101」
素因数分解しておくのが鉄則でしたね。

これらから、Aは小さい順に、
0,5×101,5×101×2×2,5×101×3×3,5×101×4×4,...
となるので、5番目に小さな数は、
「5×101×4×4=8080」
となり、左辺は、
「(2×5×101×4)の2乗」
となるので、そのときのBは、
「±4040」
となります。

「Bが負の数の場合」
を忘れるミスが多いので注意しましょう。
(※小学生は当然「4040」だけで正解です。)


【問題-2/解説】
平方根」を習って間もないときに、ミスしやすい問題です。

例えば、
「A=5×101」
のとき、
「B=±2×5×101=±1010」
となるので、
「B=-1010」(“反例”)
のとき、
「√(2020A)=B」
を満たしませんね。
∴「偽」

「ある命題が“偽”」
であることを証明するには、
「反例を1つ」
示せばいいんでしたね。

古典問題にお風呂でチャレンジ!

(2020/4/14更新【別解】)

ずっと在宅のままでは、生活に変化が欲しいですね。

下記は、簡単な準備だけで、実際に試しながら考えることができる“論理問題”です。
お子さんとお風呂に入りながらでもやってみてください。

クイズやなぞなぞが好きな人は、どこかで見たことがあると思います(“油分け算”)。


【問題】

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容量が10,7,3の容器が1つずつある。
容量10の容器が満水の状態であるとき、この水を二等分する方法を考えよ。
(※容器形状は関係ない方法とする。)


実際に試してみる場合は、この問題の意図しない解決法を見つけるお子さんもいるかもしれません。
それはそれで“賢い”証拠でもあるのですが、今回は論理の構築方法を学ぶことを目的としましょう。

「意図しない解決法」を除外させるには、できるだけ“不整形な容器形状”であることが好ましいです。


円柱状のペットボトルなどを切断して作れば、中間部分と底の部分の形状も異なり、ちょうどいいと思います。
※なお、ペットボトルは透明なので、容量10と容量7の容器は“異なる形状(円柱と角柱等)”のものが好ましいです。


例えば、
「計量カップで200mlと140mlと60ml」
を量って水面ラインでペットボトルを切断します。

各容量が正確に
「10:7:3(すりきり)」
となるように容器を作っておくと、解決法を見つけた時に気持ちがいいでしょう。

最後は計量カップに入れて、水量の目盛りが「100ml」となれば正解ですね。


初見の人の“お楽しみ”のために、正解は明日(以降)アップすることにします。

なお、解決法は1通りだけではありません。

ただ闇雲に試行錯誤するのではなく、方向性を見定めた上で考えを巡らせましょう。


【解説】
今回のように、
「結論がわかっている問題」
に対処する場合は、まず
「結論に至る一歩手前の状態を考えよ」
が鉄則です。

つまり、
「証明問題」
「作図問題」
などは、この鉄則に則って解き進めていけばいい訳です。


さて、今回の問題の場合は、
「5=1+4」(*1)
「5=2+3」(*2)
の2パターンがまず考えられますね。

しかし(*1)の場合は、
「水量1も4も容器がない」
ので後回しにすべきですね。

一方(*2)の場合は、
「容量3の容器はある」
ので、
「水量2をつくればよい」
という考えに至ります。

後は、その方法を考えていくだけです。

下の「数の列」は、左から
「容量10-容量7-容量3」
の各容器に入っている水量を順次表したものです。

10-0-0
7-0-3
7-3-0
4-3-3
4-6-0
1-6-3
1-7-2
8-0-2
8-2-0
5-2-3
5-5-0


で、再び(*1)の場合を考えてみると、
「水量1や4をつくる」
ことはできるものの、
「残りの容器で水量4や1をつくる」
ことはできませんね。


なお、「この問題の意図しない解決法」とは、
例えば、容器が“整形の円柱や直方体”だと、
「容器を慎重に傾けていく」
ことで水量を二等分することはできますね。
(※“柱体の1/2の体積”を求める方法ですね。)

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まだ、別の方法もあるので考えてみてください。


【別解】
捉え方を転換してみると、
「5=7-2」
という“引き算”で考える方法もありますね。
(※「5=10-5」は考える必要はありませんね。)

10-0-0
3-7-0
3-4-3
6-4-0
6-1-3
9-1-0
9-0-1
2-7-1
2-5-3
5-5-0

「容量3の容器に水量1が入っている」
状態をつくれば、
「水量7から水量2を引く」
ことは可能となりますね。


このように、
「様々な角度から事象を論理的に捉える」
姿勢の大切さは、今後数学を学び進める中で実感することでしょう。

現実の社会・自然現象に起因する諸問題は、論理的に分析するだけで解決の道が見いだせるほど単純ではありませんが、「まずは論理的に捉えてみる」ことは大切な一歩です。
そんな事態に備えるために数学を学んでいる、といっても過言ではないでしょう。