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「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

概ねどのくらいの数になるのか(2024慶應義塾大学/理工・改題)

「数学」が嫌いだっだり苦手だったりしても、日常生活において“概数”を活用する機会はかなり多いはずです。
 
「どちらの割り引きの方がお得なのか?」
「割り勘するといくらくらいになるのか?」
「あとどれくらい並ぶ必要がありそうか?」
 
計算が苦手だったとしても、何とか概数をはじき出して考えたりしていますよね。
 
 
数学を学ぶことで体得してほしいことは、
「論理的思考力を身につける」
ことに尽きると言っても過言ではありませんが、
「概数を活用する力をつける」
ことの方が、一番身近な成果として実感できるのかもしれません。
 
 
ついこの前扱った、
「分母か分子を揃えて分数の大小を比較する
という方法は、皆さんが実際に生活していく上で、ごくごく自然に実行していることだと思います。
 
また、数学の問題っぽさは否めませんが、
「2の27乗と3の18乗ではどちらが大きいか?」
という比較をしたい場合も、実際に手計算するのは大変ですが、
「8の9乗と9の9乗の大小比較を行えばいい」
とわかれば、どちらが大きいかは明らかですね。
 
つまり、
「数の大小を比較する原理」
さえわかっていれば、簡単に暗算で比較することもできますし、一見込み入った計算が必要になりそうであっても、“概数”を活用することで意外と簡単に比較できてしまうこともあります。
 
そのような
“数学を学びながら培った力”
は、日常生活では色々と役立ってくれます。
 
 
 
ある大学の今年の入学試験の冒頭で、
【2024の6乗根に最も近い近い自然数は?】
という設問がありました。
 
2024の6乗根」
とは、
「6乗したら2024となる数」
という意味です。
 
自然数”という限定条件がついているので、小学生でも取り組むことは可能です。
 
 
まず、
「概ねどのくらいの数か?」
のあたりをつけましょう。
 
例えば、
「56乗」
だと、
「125×125」
なので、2024をはるかに超えてしまうことは明らかですね。
 
そこで、少なくとも
「2の6乗=64」
よりは大きいことはすぐわかるので、
「“34”の6乗あたりだろう」
という見当がつきます。
 
「3の6乗=729、4の6乗=4096」
であることから、
「3<2024の6乗根<4」
とわかります。
 
しかし、
「2024は“3の6乗”の方に近い」
ことを根拠に、
2024の6乗根に最も近い近い自然数3」
とするのは早計です。
 
 
ニュースなどで、
“指数関数的に増える”
との表現を目や耳にしたことはありませんか。
 
「1より大きな数の累乗」
であれば、その指数が少ない段階から驚異的に大きな値になってきます。
 
 
わかりやすくするために、
「比例(y=2x)と指数関数(y=2のx乗)
で比較してみましょう。
 
例えば、
「2の3倍は6、2の3乗は8」
とほとんどかわりませんが、
「2の6倍は12、2の6乗は64」
とすぐ5倍以上になってしまいますね。
 
つまり、
6乗もしてしまうと元の数どうしの差とはかけ離れてくる」
と心して対処する必要があります。
 
 
では、どうすればいいでしょうか。
 
 
この設問では
「最も近い自然数
を問うているので、
「“3と4の中間値である7/2”の6乗と2024の比較」
を行うことで、
「3と4のどちらに近いか」
を正確に答えることができますね。
 
「7/2の6乗=117649/64」
となりますが、若干計算が面倒なことから
「7の6乗を“概数”で求める」(※)
方法もありますが、
「その方法によっては答えを左右しかねない」
ので、このくらいの計算はしてしまった方が無難でしょう。
 
但し、
「117649/64」
の計算は、
「筆算で2が立たない(つまり2000未満)」
とわかった段階まででOKです。
 
(※7の6乗=49の3乗≒50の3乗」
を用いる訳ですが、“結果論的”には
50の3乗/2の6乗<2000」
となるため、概数で検討を進めても問題ないとわかりますが、試験中であれば“手戻り”のリスクを避けるためにも上記の方法をとるべきでしょう。)
 
つまり、
7/2の6乗=117649/64<2024<4の6乗=4096
とわかるので、
「最も近い自然数は4」
となりますね。
 
 
 
因みに、この設問の前段に
【2024の6番目に大きな約数は?】
との設問がありますが、その求め方はわかりますね。
 
まず、2024を素因数分解してから
「約数の個数=4×2×2=16個」
と求めたら、
「小さいものから数えて6番目の約数=22」
が簡単に求められるので、
∴6番目に大きな約数=92
 
 
(2024慶應義塾大学/理工・改題)