数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

「√□が“整数”となる」

いわゆる“西暦年数問題”ですが、与条件をしっかり把握することが大切です。


【問題】
√(2018-2n)が整数となる自然数nの個数は?
(2018都立立川)


【解答】
「根号のついた数が“整数”になる」との与条件のときは、

「“0となるとき”を忘れるな!」

が大鉄則でしたね。

本問の場合では、「n=1009のとき」を決して忘れてはいけないということです。

根号の中が負になると題意を満たしませんから、「nの最大値は1009」となります。


それをしっかり踏まえた上で、
根号の中を2(1009-n)と因数分解します。

すると、(1009-n)の部分が
2×(1の2乗)、2×(2の2乗)、・・・、2×(22の2乗)~(*)
であれば根号がとれます(つまり整数になります)ね。

よって、題意を満たすnは、
(*)に対応した22個と、冒頭の1個(n=1009)で、合計「23個」が正解となります。


「根号のついた数が“0となる”」場合を忘れて、「22個」とする誤答が多かったかもしれません。

本問のような“定番のひっかけ”でミスをしてしまうことがないように注意しましょう。

整数or自然数(2018中大杉並)

平方根」や「確率」の問題で、
条件が「整数or自然数」は大きな問題です。


[問題]
大小2個のサイコロ(目の数をa,b)を同時に投げたとき、10/(2a-b)が整数となる確率は?


[解答]
“整数”との条件から、まず注意すべきは
「0となる場合」でしたね。

本問では「分母側に変数」がきているので、「0となる場合」を考える必要がないとわかります。
しかし、そこで安心してしまうとミスを犯してしまうので要注意です。

「(2a-b)が10の約数となる」場合を考えていけばよいのですが、“負の約数”の場合を忘れずにカウントできるかが鍵となりますね。
それができれば「7/18」と正答にたどり着けます。


平方根」の問題では、
ほとんどの場合が「√の中に変数」が入っており、それが“負の数”となることを考える必要はありませんでしたね。
(高校生になると数の世界が広がるので
“√の中が負の数”となる場合まで考えます。)

与条件の“整数or自然数”には十分に注意して問題に臨みましょう。

比の移動(2019神奈川県立)

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定番の問題でありながら苦手な生徒が多い「比の移動」について説明しておきます。

「相似」の基本さえ理解していれば、小学生でも解けると思います。


【問題】
AD=DB,AE=EF=FCの△ABCにおいて、△BGDの面積をS、四角形EGHFの面積をTとするとき、S:T=?


【解答】
S:Tを求めるためには、まず何がわかればいいか?

「BG:GEとBH:HFの比」がわかればいいですね。

では次の一手は何か?

“比を移動させるための補助線”を引くんでしたね。
(これができない人が多いのです・・。)

まず着目すべきは、「BG:GEとBH:HFの比を形成する内分点G,Hを通る直線」です。
この直線に平行な補助線を引いていけば「BG:GEとBH:HFの比」が求まります。

図のように、EI〃FJ〃CDとなるように線分AD上に点I,Jをとります。
これにより
BG:GE=BD:DI=3:2
BH:HF=BD:DJ=3:1
とわかります。
△BAE=△BEF=1と考えて
∴S:T=1/2×3/5:(1-3/5×3/4)=6:11

※熟知している人は“メネラウスの定理”を用いても構いません。

「受験算数」の定番幾何問題?

受験算数を習っている小学生ならば、あっさりと正答だけは導けるかもしれません。

しかし、「なぜそのように計算すれば正答が導けるのか」ちゃんと説明できますか?


【問題】

図のような長方形(20×12)の、各辺上の4点を結んでできる四角形PQRSの面積を求めよ。


“論理的思考力をしっかりと備えた”小学生ほど悩む可能性がある問題です。

一方で、ちょうど今頃の中3生に是非取り組んでもらいたい練習問題でもあります。

大人の方も是非解いてみてください。


【解説】

受験算数を学んでいると、
「四角形PQRS=(20×12-10×4)÷2」 (*)
機械的に解いてしまう子が多かったのではないでしょうか。

しかし、その計算で本当に正しいのか説明できますか?

説明できないならば、「受験算数」を学ぶ過程での、いわば“過度なパターン練習の弊害”が見え隠れしている可能性もあります。


受験算数で出題される場合は、
「“四角形EFGHが四角形PQRSの内部に含まれている”図」
になっているはずです。

そうであれば、(*)式のような計算で求まる原理も、頭の中だけで理解することも難しいことではありません。


しかし本問では、
「“四角形EFGHが四角形PQRSの内部に含まれていない”図」
となっています。

よって、論理的思考力がしっかり備わった“慎重な小学生”(本来あるべき姿ですが…)は、
「(*)式のように求めてしまっていいのか?」
と悩むはずです。

(※要望があれば、小学生用に解説します。)



【中学生編】
基本に忠実に、未知数を設定して方程式を立てて解いてみるべきでしょう。


この場合、横と縦の両方向に、つまり二つの未知数を設定する必要があります。

ということは、方程式も二つ必要になり、悩んでしまいますね…。

しかし、まずは強引にでも前に進んでみましょう。


DP=x ,DS=y と設定すると、

四角形PQRS
=四角形ABCD-(△DSP+△CRS+△BQR+△APQ)
=20×12-{xy/2+(x+10)(12-y)/2+(10-x)(8-y)/2+(20-x)(y+4)/2}
=240-140
=100

となり、きれいにx,yが消えて面積が求まってしまいます。


結果的には、方程式を二つ立てる必要はなく、「中3・展開計算の練習問題」となります。


※なお、中3生ならば、上記の原理は「三角形の合同」を用いて証明できるはずです。

G.C.D.とL.C.M.

小学生がよく「最小公約数?」や「最大公倍数?」などとやらかすアレです。
こういう場合は、
「暗記するのではなく意味を考えようね」
と言ってあげましょう。

「最大公約数(G.C.D.)」と「最小公倍数(L.C.M.)」に関する定番問題です。

前回の“互いに素”が正に鍵となってきます。


【問題】
G.C.D.が31である2つの自然数A,B(A<B)がある。

(1) A×B=31713のときA,BのL.C.M.は?

(2) B=1116のときAのとりうる値の個数は?


G.C.D.とL.C.M.の意味・性質を、改めて再確認しておきましょう。


【解説】
まずは題意より、
「A=31a,B=31b」(*1)
とおけます。

このときに重要なのが
「aとbは“互いに素”(a<b)」(*2)
となることです。
G.C.D.とは何か?を考えればわかりますね。

では、このA,BのL.C.M.はどうなるでしょうか?
31aと31bを連除法にかければわかりますね。
「A,BのL.C.M.は31ab」
となります。

ここでA,Bの積を考えてみましょう。
「A×B=31a×31b=31×31ab=G.C.D.×L.C.M.」(*3)

つまり
「(2数の積)=(最大公約数)×(最小公倍数)」★
となる訳です。

これらを踏まえて解いていきましょう。


(1)
A×B=31713=31×1023
よって(*3)より、
AとBのL.C.M.は1023。


( 2)
(*1)より、
B=1116=31×36よりb=36

あとは(*2)を用いてaを絞り込んでいくと、
a=1,5,7,11,13,17,19,23,25,29,31,35

よってAのとりうる値の個数は12個。

※注意してほしいのは、
a=25,35の場合を忘れないことです。
「b=36と互いに素」であればよいので、
素数でない数”も該当しますね。


なお★のG.C.D.とL.C.M.の性質は、
特に上位校をめざす人には重要事項となります。

どの2数も“互いに素”

「整数」を扱う際に、“互いに素”は大切なキーワードとなります。
(この問題は、“互いに素”という言葉を知らなくても解けます。)


【問題】
1つのさいころを3回投げて出た目を順番にa,b,cとする。
a,b,cのどの2つを選んでも最大公約数が1になる確率は?


「2つの数の最大公約数が1」とは
「2つの数が“互いに素”」とも表現しますね。

この関係は、
「2つの数が素数でなくても成り立つ」
ことを再確認しておきましょう。

そして、
「3つの数のどの2数についても上記が成り立つ」
とはどういうことかを慌てずに考えましょう。

落とし穴に落ちずに正解にたどり着けるか、トライしてみてください。


【解答】
このような問題では、
「“組”で列挙していく」
のがミスを防ぐ鉄則でしたね。

そして、
素数ではない数が含まれている場合もある」
ことに注意しながら、
「同じ目が複数あってはいけない・・・」(*)
と「組」で列挙していくと、

(1と2と3)、(1と2と5)
(1と3と4)、(1と3と5)
(1と4と5)
(1と5と6)
(2と3と5)
(3と4と5)

の8組あります(各組6通りずつ)。

しかし、
「1と1の最大公約数は1」
ですから、
「1の目は複数あってもよい」
と気付けるかがポイントです。
つまり、

(1と1と1~6)

の組を忘れてはいけません。
このタイプは6組あり、
1+3×5=16通りあります。

∴(6×8+16)/(6×6×6)=8/27

(2018巣鴨高校


(*)にとらわれすぎて注意を怠ると、カウントミスを犯してしまいます。

確率問題では「正確に素早く」カウントする練習が不可欠です。

となり合う素数

例えば「3と5」を“双子素数”といいますが、そんな「となり合う素数の差」についてのちょっとオモシロイ問題です。

小学生以上ならば解けるはずですが、「アッという間に解けるか」トライしてみてください。


【問題】
1以上1000以下の素数を小さい順に並べたとき、「となり合う素数の差の平均」を小数第3位を四捨五入して求めよ。

ただし、「1以上1000以下の素数は全部で168個で、997は素数である」ことはわかっているものとする。


【解説】
一見して「ん?」と感じた人もいるかもしれません。

しかし、問題文の意図をしっかり理解すればアッという間に解けてしまいますね。


ポイントは、
「となり合う素数の差を全て加えるとどうなるのか」
ですね。
また、「差」は全部で168-1=167あることにも注意ですね。

(997-2)/167を計算すると
5.958...となるので小数第3位を四捨五入して
∴5.96
(2018 國學院大學久我山高校)


なお、「100以下の素数」についてはすぐ判別できるようにしておきましょう!