数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

「都立青山」の入試問題(~2022)

2022年の都立青山の入試において、都立高校としては画期的な出題がありました。

それは、
「答えが限定されていない」
というところです。

「例を一つあげよ」という出題ならばよくありますが、いくつかの選択肢の中から正しい選択をした上で、そこからさらに深堀りさせていくような内容でした。

新しい指導要領に沿ったものであるとは思いますが、記述式問題であることもあり、採点者側の労力を考えるとよく思い切ったと思います。


同校では、2021年から最後の大問で“深く考えさせる”内容の出題がなされるようになりました。

かといって、都立西のような「数学が得意でなければ“捨て問”とすべし」というような内容ではなく、程良く考えさせるなかなかの“良問”です。

ただ、同校の受験生レベルに適しているかは、今後の行方を見守っていくべきでしょう。



以前同校入試では、普段行われている数学授業の質までも疑いたくなるような“悪問”が続いたことがありました。

当時の同校では、立地のせいもあって特に女子の倍率は飛び抜けて高いものでした。

しかし、独自入試実施校の中で比較すると大学進学実績があまり芳しくなかったようで、何とか入学者のレベルを上げたかったのでは…という背景も邪推できます。

そこで、それまで“素直で取り組みやすい”内容が定着していた入試問題を、そのレベルを上げるべく取り組んだのでしょう。

しかし、出題内容のレベルは標準的であるのに、同じような説明を何度も繰り返すような“無意味な長文化”で、受験生に解く時間をかけさせるような内容でした。

出題レベルを上げたいのであれば、当然“問う内容のレベル”を上げるべきで、解答に取りかかる以前の段階での問題文の読み取りに時間をかけさせることで、さも「難しい長文問題でしょ?」と言っているかのような出題は、本末転倒も甚だしい!と憤りさえ感じたことを思い出します。


例年長文形式で出題しているのは「I.C.U.」ですが、読み物のように受験生の思考を深部へと誘導するような独特な構成の良問です。

どうしても長文問題にしたいのであれば、順を追って論理的に説明する必要性がある設定でなければならず、長文化せざるを得ないことに問題としての意義がなければなりませんね。特に「数学」の問題の場合は。



…とまぁ過去のことはさておき、現在進行中の入試問題の変革の方向性は間違っていないので、より磨きをかけていってほしいと思います。


【問題】
直方体ABCD-EFGHのAB=6,AD=8,AE=24。
辺AE,BF,CG上にある点をそれぞれP,Q,Rとし、
AP=x,BQ=3x,CR=2x(0≦x≦8)とする。

△PQRがどんな三角形(二等辺三角形、正三角形、直角三角形、直角二等辺三角形)となりうるか1つ選べ。
またそのときのxの値を求めよ。



与条件から絞り込んでいくと、
「どの三角形ならあり得るか」
がわかります。

ただ、この問題文では、
「xの値を“全て”求めよ」
と記されていないところが曖昧です。

「xの値を“全て”は求めていない場合」
でも満点を貰えるか否かは不明ですが、記述式問題であることもあり、部分点は貰えるはずです。

というのも、どの選択をしたとしても「複数のxの値」が存在するので、時間との兼ね合いで「1つだけ」答えて終わりとしたケースも多かったと思います。



【解説】
どちらを選択しても構いませんが、もし最難関校の入試であったならば、“全て求めきれるか”も合格に向けて大切になってくるでしょう。


■「二等辺三角形」の場合
PQ=PRのときx=8√3/3
PQ=QRのときx=2√21/3

■「直角三角形」の場合
∠Q=90゜のときx=0
∠R=90゜のときx=8


必ず“PR≠QR”となることから、他の選択肢はあり得ませんね。

後は条件式を立ててxを求めるだけです。
(※「∠Q=90゜,PQ=QR」の条件式を立てた場合は注意しましょう→不適)


なお、立体的な図をもとに検討していたり、立体把握が得意な生徒ほど、「x=0の場合」を見落としがちでしょう。

通常ならば「x>0」で検討させることの多い動点問題であることもあり、その場合はこの条件であれば「∠Q=90゜」とはなり得ないことがすぐにわかってしまいます。
そのため、ついつい除外して考えてしまうのも理解できますが、入試の場合は“条件把握”には念には念を入れましょう。