数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

「平面図形の辺の比」を求めさせる良問(2023筑駒中・改題)

入試は毎年行われるものなので、その問題作成者は毎年頭を悩ませていることと思います。
 
とは言え、受験生にとっては入試の関門を突破できるか否かでその先数年の進路が決まってしまうので、適正な競争が行われるような内容の問題であってほしいと望むのも当然です。
 
無意味に長ったらしい説明だけを繰り返すような長文問題であったり、現実的に想像しにくいような“問題本位の設定”であったり、とにかく出題内容のレベル以前の“不具合”を抱えた問題を提示されると、取り組む意欲をより増大させる方向に向かうのではなく、“怒り”の感情とともに向き合うことさえ放棄したくなることの方が多いでしょう。
 
しかし、正に“徐々に篩にかけられていく”ような良問を提示されると、もし太刀打ちできなかったとしても、受験生は清々しささえ感じることでしょう。
 
そんな問題にトライしてみましょう。
 
 
【問題】
辺の比が「3:4:5」の直角三角形の最長辺と二番目の長さの辺の間の角度をp゜、「7:24:25」の直角三角形の最長辺と二番目の長さの辺の間の角度をq゜とするとき、次の辺の比を求めよ。
(1) △ABCの点Aから辺BCに下ろした垂線の足をA’とし、∠BAA'=p゜,∠CAA’=q゜のときの辺AB:辺BC
(2) ∠D=p-q゜,∠E=p+q゜の△DEFの辺DE:辺EF
(3) ∠G=p゜,∠H=q+q゜の△GHIの辺IG:辺GH
 
(※一応小学生でも理解できる内容に改題しているつもりですが未習の表記があるかもしれません。上記の3辺比の三角形が直角三角形となることは中3相当の知識が必要となるため“直角”と記しています。p,qの設定については「最小内角の角度」と記しても小学生は理解できるとは思いますが、安全のためややまだるっこしい説明文としています。)
 
 
【解説】
小設問の設定の仕方は様々ありますが、今回の場合は正統派の「(1)→(2)→(3)」の流れで解いていく設定ですね。
 
但し、
「どのように前の設問で解いた内容を生かすか」
で、徐々に頭の使わせ方を難しくさせる設問になっており、
「短時間にどこまで想像力を展開できたか」
を判断することができる良問と言えるでしょう。
 
(1)から(3)にかけて、徐々に“篩にかけられる”ように解き進められる人が減っていったと思われます。
 
 
 
(1)
これは、そのまま解けばできますね。
 
∴AB:BC(:CA)=6:5(:5)
 
 
(2)
ここまでは何とか解けてほしいところです。
 
「p゜,q゜の2角をもつ三角形」(*1)
の3辺比をまず求め、その三角形を
「辺DEの長さに合わせてにくっつける」
ことで、
「底角p゜の二等辺三角形
ができるので、
∴DE:EF=30:11
 
 
(3)
これは、
「(1)と(*1)の三角形」
を用いて、
「p+q゜,q゜の2角をもつ三角形」(*2)
の3辺比をまず求めます。
 
そして、
「(*1)と(*2)から(3)の三角形をつくる」
ことにより、
∴IG:GH=112:195