数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

正三角形を回転させると・・(小学生編)

「ねぇ、お兄ちゃん、線分を回転させると円ができるよね?」
妹が塾の算数の宿題を解いている。

「回転の中心の位置によるけど、線分上にあるのならそうだよ」
「違うの、線分から離れた点が中心なの…」
「だったら、実際にコンパスを使って考えてみてごらん」

妹は、線分の両端点の軌跡をコンパスで描いてみて、
「あ、ドーナツ形だ!でも、何かおかしいなぁ…」
「回転の中心から“一番近い線分上の点”を通るように内側の円を描いてごらん」
「…できたけど、この点て、どういう位置の点なの??」


妹が解いていた問題は、次のようなものだった。


【問題】

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正三角形ABCの辺BCの中点をOとする。
この点Oを中心として、正三角形ABCを1回転させてできる軌跡の面積をPとする。
同じく点Oを中心として、線分ABを1回転させてできる軌跡の面積をQとする。
このとき、PはQの何倍か。



「ドーナツ形の軌跡の内側の円の半径が、回転の中心から線分上の点までの最短距離であるのはわかるね?」
「うん。逆に、外側の円の半径は最長距離だもんね。」
「この条件の場合の最短距離は、点から線分に下ろした垂線の長さなんだよ。」
「ふ~ん…」
「厳密に説明すると難しくなるから、今はコンパスでいくつも円を描いてみて実感できればいいよ。」


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兄は、点Oから線分ABに垂線ODをひいて、
「つまり、外側の円の半径はOAの長さ、内側の円の半径はODの長さだね。」
「じゃあ、Q=OA×OA×3.14-OD×OD×3.14ね。」
「そう。つまり、Q=(OA×OA-OD×OD)×3.14とわかるね?」
「うん、結合法則でしょ!」
(※「×3.14」などの面倒な計算は、やらなくてもよい場合があるので、できるだけ後回しにしましょう!)

次に兄は、△OADについて尋ねました。
「これはどういう三角形?」
「90゜と60゜の半分だから…三角定規の形だ!」
「そうだね。じゃあ、OA:ODはどうなるだろう?」

兄は、妹のものと全く同じ自分の三角定規を持ってきて、妹のものとくっつけて見せました。
「あ、正三角形になってる!」
「ということは?」
「短い方が長い方の半分だから…2:1だ!」

すると妹は、OA=2,OD=1とおいて計算を始め、
「つまり、P/Q=2×2×3.14/(2×2-1×1)×3.14=4/3倍だ!」
「正解。今回は平面上の回転軌跡だったけど、空間上で回転させる場合もあるからね。」
「は~い、また今度でお願いしま~す!」


※中学生以上は、「相似な図形の面積比」を用いて一発で求められますね。