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「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

中学生も「2021大学入学共通テスト」に挑戦!(不定方程式編)

先日、初めての「大学入学共通テスト」が実施されましたね。

センター試験」の際にも紹介しましたが、「数学Ⅰ・A」であれば、公立中学生でも解ける問題が結構あります。

年頭から「西暦年数問題」を扱ってきたので、その延長として共通テストの“整数問題”にトライしてみましょう。



※基本的に問題内容は変えていませんが、中学生向けに改題してあります。



【問題】
円周上に、P0~P14の15個の点が反時計回りに順番に並んでいる。
最初は点P0に石があり、1個のサイコロを振って偶数の目が出れば石を反時計回りに5個先の点に移動させ、奇数の目が出れば石を時計回りに3個先の点に移動させる。この操作を繰り返す。


(1)
サイコロを5回振って、
「偶数の目がx回、奇数の目がy回出て、点P0にある石が点P1に移動した」
とするとき、x,yの値を求めよ。
※なお、このx,yの値は、
不定方程式5x-3y=1」
の整数解であることを確認しておくこと。


(2)
不定方程式5x-3y=8」
の整数解のうち、0≦y<5を満たす整数解x,yを求めよ。
また、この結果から、サイコロを合計何回振って、偶数・奇数の目がそれぞれ何回であれば、点P0にある石を点P8に移動させることができるか求めよ。


(3)
与条件より、
「石を反時計回りまたは時計回りに15個先の点に移動させると元の点に戻る」
ことがわかる。

このことを考慮して、サイコロを振る合計回数が(2)の結果より少ない場合において、点P0にある石を点P8に移動させることができないかを考える。
不可能である場合はその理由を述べ、可能な場合はサイコロを振る合計回数と偶数・奇数の目が出る回数をそれぞれ求めよ。


(4)
点P0にある石を点Pn(0≦n≦14の整数)に移動させるための「サイコロを振る最小合計回数」を考える。

例えば、
「サイコロを1回振って点P0にある石を点P2に移動させることは不可能」
だが、
「サイコロを2回振って、偶数と奇数の目が1回ずつであれば、点P0にある石を点P2に移動させることは可能」
である。
よって、n=2のとき「サイコロを振る最小合計回数」は2回とわかる。

では、n=10~14のとき、「サイコロを振る最小合計回数」が最も大きくなるnの値と、その最小合計回数を求めよ。



答えは、新聞やネット等で発表されている通りです。

原題は、所々にヒントをはさみつつ、“読み換え”を誘導しながら、思考力を問う問題です。
上記のように改題すれば、不定方程式の解き方を中学生に考えさせるための問題として、いい題材となるでしょう。




【解説】

(1)
すぐに
「(x,y)=(2,3)」
という整数解が求まりますね。


(2)
原題では、
不定方程式の一般解」
も求めさせていますが、その方法は中学生も十分理解できるはずですのでマスターしておくといいでしょう。

その際にも用いる手法ですが、
「(1)の整数解を8倍」
すれば1つの整数解が求まりますね。

もし一般解を求められなくても、そこからゴリゴリやっていけば、
「(x,y)=(4,4)」
という整数解が求められるはずです。

よって、
「偶数が4回、奇数が4回の合計8回」
とわかります。


(3)
この問題をすんなり解けるならば、整数の扱い方に慣れている証拠です。

石をP8に移動させるのならば、
「5x-3y=8」
という不定方程式の他に、
「5x-3y=-7」(*)
という不定方程式も使えることに、気づけるようになりましょう。

点は全部で15個なので、各点を
「15で割った余り」
に対応させて捉えればいいですね。

また、その際に、
「余り“8”=余り“-7”」
と考えることができましたね。
(※合同式を使える人はすぐにわかりますね。)

よって、(*)の整数解を考えれば、
「(x,y)=(1,4)」
という解が見つかるので、
「サイコロを振る合計回数は5回」
で、
「偶数は1回,奇数は4回」
という場合があることがわかりますね。


(4)
(3)と同様に考えていけばいいですね。

但し、
「余り“10”=余り“-5”」
の場合に注意しましょう。

すると、
「n=13のときに最小合計回数が6回」
と最も大きくなりますね。



★「(3),(4)の正答をしっかり導けるか」がポイントになってきます。
「整数の扱い方に慣れているか否か」で、解く時間に差が出てくるでしょう。