受験生は、この夏の間に、少なくともこれまでに習った内容の総復習に余念がないことと思います。
各分野において、基本から応用レベルまでの様々な問題を解くことを通して、「どのように考えて対処していくべきか」の訓練を積み重ねていくことは大切なことです。
特に応用問題に挑戦するにあたっては、以前にも述べた通り、まずは“じっくりとことん考え抜く”ことが大切であり、それを実践するには最適の期間となります。
分野ごとに集中して問題に取り組めば、夏が終わる頃には、解く時間も徐々に短縮できていることでしょう。
しかし入試本番(特に難関校)では、小問集合や大問での総合的な出題などに対して、瞬時に方針を決定して解いていかねばなりません。
つまり、個々の問題にじっくり取り組んで「解けた解けた!」と満足しているだけでは、入試本番での実力が養われたとは言えないのです。
その力を養成するのは冬以降で構わないのですが、一応心構えとしては忘れないでおきましょうね。
夏の間に“解き進めるための原理”をしっかり身につけたら、次のステップとしては、
「数ある手の中から何をチョイスするべきか」
を瞬時に判断できるように訓練していきましょう。
目的はただ一つ、
「できるだけ短時間に正解を導き出す」
ことです。
“見事なアクロバティックな解法”ばかりが最適なチョイスとは限りません。
簡単な小問集合の問題で試してみましょう。
【自然数nと12の最小公倍数が180のとき、nの値を全て求めよ。】
この問題で、“G.C.DとL.C.Mの関係公式”などを引っ張り出してくる必要はありませんね。
基本に忠実に、
「12と180を素因数分解」
することで、nの値の条件が見えてきますね。
nを素因数分解すると、
「“3の2乗と5”を必ず含み“2の指数は2以下”」
とならなければいけないことがわかると思います。
∴n=45,90,180
普通に“理詰め”で攻めていけばいい訳です。
では、次の問題はどう対処するでしょうか。
【大・中・小の3つのサイコロの目(1~6)をそれぞれa,b,cとするとき、√abcが整数となる確率を求めよ。】
人によって対処法は異なるでしょうが、その判断基準は、
「できるだけ“短時間”に“正解”を導き出す」
ことですね。
そのために、自分に合ったチョイスをしましょう。
サイコロの目は1~6に限られているので、
“abcを素因数分解した指数が偶数”
になるような「場合分け」から探っていくのも一つの手でしょう。
しかし、どうしてもその「場合分け」の段階で“抜け”が出てしまいやすいのではないでしょうか。
一つでも“抜け”があれば元も子もないので、私なら、
「abcが平方数となる場合」
を具体的に考えていくでしょう。
「1≦abc≦216」
から、
「明らかにあり得ない数(例えば49や121等)」
を除外していけば、そう多くはありませんし、具体的な数で検討することになるので“抜け”もなくしやすいはずです。
「場合分け」の段階における範囲が大きければ大きいほど、“抜け”が発生しがちでしょう。
「abc=1,4,9,16,25,36,64,100,144の場合」
が題意を満たすので、
∴19/108
“理詰め”であることは当然のこととしても、“力業との合わせ技”のような折衷解法の方が、この場合は確実かつ素早い解き方となるのではないでしょうか。
どちらの問題も、単独だったり、焦らずに取り組める状況ならば何でもないレベルだと思います。
しかし、いざ入試本番となると、
「時間制限と早く他問題へ向かいたい切迫感」
から、
「最初の一手を誤る」
ことで、思わぬ点の取り損ないを招きかねません。
冬以降で構わないので、あらゆることを想定しつつ万全の準備をしておきましょう。