数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

過去問集の良くない“模範解答”の一例(2022宮城県立[4])

これまで、幾度となく
「過去問集の“模範解答”を鵜呑みにしないように!」
と警鐘を鳴らしてきました。
 
もちろん、大半は真っ当な解説ではあるのですが、中には「ん?」と感じる内容の解説が、さも当然のような顔をして“模範解答”として過去問集などに記されているのが実情です。
 
身の回りに信頼のおける先生がいなかったり、過去問集を頼りに独学で入試対策を進めている受験生にとっては、迷惑この上ないばかりか、合否を左右する要因になってしまう恐れもあります。
 
今回取り上げる問題は、多数の受験生が対峙する公立校の入試問題であることと、この大手出版社の過去問集の“模範解答”を記した執筆者が、長年にわたる“変な解説の常習犯”であることから、敢えてどの学校の入試問題かを公開することにしました。
 
地元向けの過去問集や地元の先生達が、真っ当な模範解答を示してくれているとは思いますが、運悪くこの過去問集のみを信頼して使用している受験生を救う一助となれば幸いです。
 
 
 
【問題略記)
線分AB(=6)の中点Oを中心とする円がある。
この円周上にAC=4となる点をとり、AC=ADとなる点Dを線分AB上にとる。
点Dから線分ACに下ろした垂線の足をEとする。
直線CDと円Oとの交点のうちCではない方をFとする。
直線EDと線分BFとの交点をGとする。
このとき、ED:DGの線分比を求めよ。
 
(※条件設定の記述がややまだるっこしくなっていますが、実際の問題では誘導設問がいくつかあった上で上記の設問が最後にあるので勘弁願います。)
 
 
 
初見の場合は、まずは実際に解いてみた上で、“模範解答”とやらの内容を吟味してみてください。
 
 
 
【“模範解答”】
点B,Fから直線EGに下ろした垂線の長さを求め、△FBDの面積から線分DGを求めています。
あまりに面倒な解き方なので、詳細は省きます。
 
これを読んで信頼してしまった受験生は、
「この設問は“捨て問”だな…」
と感じてしまったかもしれませんね…。
 
 
 
【解説】
題意から、
「CB〃EDG」
は明らかなので、
「線分ED,DGが線分CBの何倍か」
を求めれば解けてしまいますね。
∴ED:DG=2/3:3/7=14:9
 
その過程では、
△ADC∽△FDB,△ABC∽△ADE,FBC∽△FGD」
を用いる訳ですが、実際の試験時間中には気づけなかった受験生がいてもおかしくない設問ではあります。
 
しかし、“模範解答”として世に出すからには(しかも大手出版社の過去問集で)、上記の【解説】の解き方を示すのが、受験生に対する当然の責務でしょう。