数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

格子点問題(2018学大附属)

「格子点の個数」を求める問題は、今年の筑駒でも出題されています。

今回は2018年の学大附属の入試問題を題材とします。

実際の問題ではP,Qの座標はパラメータ表示して与えられてはいませんが、座標平面上の2動点を用いた定番の格子点問題です。

まずは、「動点問題での鉄則」通りに、2動点の座標をパラメータ表示して、順次解き進めていくことを出題者は求めている訳ですが、今回は純粋な整数問題とするために改題しました。


【問題】
P(6-t,11-2t/3),Q(t,-t/2)の2点の中点が格子点となるような整数tの値はいくつあるか?ただし、0≦t≦80とする。


【解説】
2点P,Qがパラメータ表示されているので、
中点の座標は(3,11/2-7t/12)
と求まります。

後は、このy座標が整数となるtを見つけるだけです。
しらみつぶしでも構いませんが、少しでも素早く見つけるべきです。

色々な方法がありますが、
「11/2からの減法で整数となる」
という観点から考えれば、
「tは6を奇数倍した数である」
と気付けるようになってください。
(「難しい」と感じる人は今のうちにじっくり考えてみてください。理由がわかるはずです。)

よって、
「6,18,30,…,78」
の7個が正解となります。

「正五角形」入試問題

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「正五角形」に関しては、
例えば、筑駒(正十二面体)、学大附で2018年に出題されています。

何れも、「正五角形と黄金比の関係」を理解していれば、簡単に解くことができるものでした。

小さい頃から慣れ親しんでいれば、得意分野とすることも可能でしょう。


※筑駒(正十二面体) 問題/解説
https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2019/10/29/%E6%AD%A3%E5%8D%81%E4%BA%8C%E9%9D%A2%E4%BD%93%E5%95%8F%E9%A1%8C%EF%BC%882018%E7%AD%91%E6%B3%A2%E5%A4%A7%E9%99%84%E5%B1%9E%E9%A7%92%E5%A0%B4%EF%BC%89


※学大附属 問題/解説
https://mcafejr.hatenablog.com/entry/2020/12/03/124541

“正五角形”を見つけよう!(夏休み自由研究)

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正五角形は、「黄金比」という大切な要素を内包しています。

ピタゴラス学派」、「陰陽師」などと正五角形との関係から調べていっても面白いでしょう。


そして、私達の身のまわりにも、“正五角形”は結構あります。

「オクラ」の断面にもキレイな正五角形が現れています。
他の野菜や果物の断面はどうなっているでしょうか。
海で探してみても、どこかに発見できると思いますよ。

それらは、なぜ自然界において「正五角形となる形態」を進化の過程で獲得したのでしょうか?
仮説を立てた上で、調べてみてください。
きっと将来に役立つ時が来ます。


因みに、「オクラ」はアフリカ原産だって知っていましたか?

黒人の女性がスーパーで「オクラ」を真剣に選んでいるのを見て、
「随分日本食に馴染んだんだなぁ」
と的外れな感心を抱いた記憶を恥ずかしく思い出します。

周期性(2018都立戸山)

前回のフラーレン(C60)を受けて“60”にちなんだ問題です。

都立戸山では、「周期性」を題材とした大問がよく出題されます。

2018年は小問集合で出題されましたが、「所詮小問集合でしょ・・」と侮ると、ミスを犯しやすい問題です。


【問題】
円周上の60個の点のうち1つをAとする。

1~6の目が出る大中小のサイコロを、同時に1回投げて出た目の数の積をnとする。

点Aを出発し時計回りにn個だけ点上を移動したとき、点Aの位置にある確率は?(抜粋)


あまり時間をかけずに解ききりたいところですが…。


【解説】
こういう問題でまず必ずすべきことは、
“「nの値の範囲」の把握”
です。

3つのサイコロの目の数の積なので、「1×1×1≦n≦6×6×6」
となります。

つまり、点A上にあるのは
「円周上を1,2,3周したとき」
とわかります。
(※この検討をしていないがために、「1周したときのみ」で答えたミスが多かったと思われます。)


(1)1周したときは、
{2と5と6},{3と4と5}
の2“組”あります。

(2)2周したときは、
{4と5と6}
の1“組”のみです。

(3)3周したときは、
{5と6と6}
の1“組”のみです。


このときのポイントは、まず“組”で考えることです。
いきなり“順列”で考え出すと、数え漏れなどのミスを犯しやすくなるので注意です。


(1)、(2)は各6通りで、(3)は3通りなので、合計21通りあることがわかります。

∴確率は、21/(6×6×6)=7/72

正二十面体(続編)

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正二十面体の頂点は、
3×20÷5=12個ありますね。

一つの頂点から、辺長の1/3だけの距離の点を、頂点につながる五つの辺上にとり、それらを結んだ平面で正二十面体を切断すると、切断面は正五角形となります。

上記の切断を全ての頂点において行うと12個の切断面(正五角形)が現れますが、その切断面のみを黒く塗ると、サッカーボールのような立体(切頂二十面体)ができます。

この立体の頂点数は、「正二十面体の一つの頂点につき頂点数が5個になった」と考えればいい訳ですから、5×12=60個あります。

この美しい立体の60個の頂点の位置に炭素原子がくると、安定した状態になります(“フラーレン”と呼ばれます)。


人工的に安定状態にさせる場合に限らず、自然界においても正五角形や正六角形はよく現れる形です。

代表的なものでは、「桜の花弁」や「蜂の巣」がありますね。

家のまわりや旅行先で探してみるなど、夏休みの自由研究にはピッタリの題材だと思います。


それらに興味を持って調べ始めると、また面白い世界が待っていることでしょう。
(「黄金比」との関連を調べてみると・・・?)

正二十面体

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正多面体は、「夏休みの自由研究」の題材としても是非お薦めします。

正二十面体は、合同な正三角形20個によって形成された、面の数が一番多い正多面体です。

20面もある正多面体ともなると、すぐにイメージするのは難しいかもしれません。

ですから、お子さんが小さな頃から、正多面体の実物が身近にあるようにしてもらえればと思います。

「各面の重心を繋ぐとどんな立体ができるか?」
「各正多面体どうしの関係は?」
などがイメージできるようになると、立体把握能力の訓練にもなります。

そこに興味を抱いたお子さんは、正多面体の不思議な世界に引き込まれてしまうかもしれません。

「√□が“自然数”となる」

これも、与条件をしっかり把握することが大切です。


【問題】
√(582-6n)が自然数となるような素数nの値を全て求めよ。
(2018都立西)


【解答】
「根号のついた数が“自然数”となる」

との与条件なので、

「“0となるとき”を考えなくてよい」

というところが、前回の問題との違いです。


それを踏まえた上で、
根号の中を6(97-n)と因数分解します。

すると、(97-n)の部分が、

6×(1の2乗)、6×(2の2乗)、6×(3の2乗)、6×(4の2乗)

であれば根号がとれます(つまり自然数になります)ね。


「nは素数」との条件を忘れずに吟味して、
「n=43,73」が正解となります。


もしも本問が

「・・が“整数”となるような・・」という与条件だったならば、

「n=43,73,97」が正解となっていた訳です。


逆に言えば、上記のような誤答も少なからずあったでしょう。