数学カフェjr.

「知っておいてほしい」又は「ちょっとオモシロイ」初等数学を、高校受験をする又は中高一貫校在学の中学生を中心に、小学生~大人の方に向けてお伝えしていきます。

ちょっと変わった“プレゼント交換会”(2022大学入学共通テスト)

昨年の「数学Ⅰ・Aの共通テスト」は、本ブログでいくつも取り上げたように、“中学生にも解ける問題”が多かったのですが、今年は様相が変わり、中学生で何とか太刀打ちできるのは上位校を狙う受験生くらいでしょう。

特に各大問のラストの設問は、高校生でも解くのに時間がかかったのではないかと思います。

実際、「中間集計の平均点で40.25点」と、昨年より17点以上も低いようです。



今回取り上げる「プレゼント交換」などを題材とした完全順列問題は、確率関連では定番ですね。

よって、それを少しでも捻るために、
「ちょっと現実ではあり得ないような設定」
で共通テストに出題されました。


複数人がそれぞれプレゼントを一つずつ持ち寄った上で交換会を開く設定なのですが、
「外見が同じ袋に一つずつ入れて各人にランダムに配る」
という方法で、
「一人でも自分の持参したプレゼントを受け取った場合は交換をやり直し、全員が自分以外の人が持参したプレゼントを受け取ったところで交換会終了」
というルールで行われます。

ここで気になるのが、“同様に確からしい”状況にしたいのならば、
「袋の外見から全く中身の形や大きさを推測できない」
ようにしなくてはならず、
「(重さなどによって)“配る人”の意思が全く反映されない」
ようにする必要もあります。
そして何よりもあり得ないのが、
「配られたプレゼントを一旦見る必要がある」
ところです。
「一度見たものを戻す」
など興ざめもいいところです。

さらに、プレゼント自体は異なっていても、その包装が全く同じ(同店同種など)で、自分の持参したものか否か区別できないこともあり得るでしょう。


…と、いちゃもんをつけるのが無粋なのは十分承知していますが、あまりにもツッコミたくなる設定ですね。

設定を日常的な事例に当てはめたいのであれば、
「“配る係になるはずの人”が、各人が持参したプレゼントに当人にはわからないように番号を割り振り、それらの各番号を書いたくじを用意して引かせ、それが当人のものか否かをチェックし、不都合がある場合は全員にくじを引き直させる」
というルールにするのが現実的でしょう。
まぁ、この説明が煩雑になるのでやめたのでしょうが…。
しかし、“交換会に加わらない第三者”が必要になることは、どちらの設定でも変わりませんね。


さらに、文章表現上でも、
「“ちょうど1人(or2人)”が自分の持参したプレゼントを受け取る場合」
とあったのですが、何か違和感を感じます…。
「“1人(or2人)だけ”」
と表現すればいいのではないでしょうか…。



とは言え、この
“ちょっと変わった設定のプレゼント交換会”
によって、今までの完全順列の問題にはなかったような、ちょっとオモシロイ設問が可能となりました。


【問題】
(上記設定で)A,B,C,D,Eの5人が交換会を開く。
1回目の交換でA,B,C,Dがそれぞれ自分以外の人の持参したプレゼントを受け取ったとき、その回で交換会が終了する条件付き確率を求めよ。


中学課程のみでは「条件付き確率」を学んでいませんので、一応「高1生以上」が対象となります。

但し、概念自体はそれほど難しいものではないので、中学生も自分で調べて理解することは可能だと思います。
(※簡単に言えば、
「1回目の交換でA,B,C,Dがそれぞれ自分以外の人の持参したプレゼントを受け取ったとき」
をスタートラインとしたとき、
「その回で交換会が終了する確率」
を求める訳です。)



【解説】
「1回目の交換でA,B,C,Dがそれぞれ自分以外の人の持参したプレゼントを受け取ったとき」
とは、
「その回で交換会が終了する場合」(*1)
と、
「その回で交換会が終了しない場合」(*2)
の2パターンしかないと考えられれば簡単に解けますね。

つまり、
(*1)の場合が
「5個の完全順列」、
(*2)の場合が
「4個の完全順列」
と考えればいいので、
∴44/53


「条件付き確率」の定番の解き方でも構いませんが、上記のように基本に立ち返った解き方の方が簡単ですね。

一番失敗しやすいのが、上記に気づかないまま、
「Eの持参したプレゼントを受け取る人」
に着目し、場合分けして考えていった場合です。

冷静に考えられる状況ならば、そのアプローチで全く問題ないのですが、今回の場合は、そうすることで逆に検討が若干面倒になってしまい、それがミスを誘発する可能性が高まるでしょう。